日本球界を騒がせている野球賭博問題。野球に金銭のやりとりは付き物だ。米国では草創期から「野球は賭博師のために選手を雇うスポーツ」と言われてきたからだ。
1870年代半ば、プロ野球選手は高収入を得ていた。当時の最高給取りジョージ・ライトは平均的労働者の7倍に当たる年俸1400ドルを稼いでいた。これに対し選手たちより多く稼ごうと野球賭博に目を付けた連中がいた。
相場師たちは金融市場で買い占め、株式を混乱させて利益を独占してきた。それと同じように野球の試合にも手を伸ばしつつあった。76年に米国が建国100周年を迎えようとしたとき、野球に対する人々の信頼は失われ始めていた。
野球界の先駆者ヘンリー・チャドウィックは「観客席で大金がやりとりされ、ニューヨークの人気球団に至っては試合を売ったとされる。クリーンな野球が出来ないならバットを捨てるべきだ」と球界を救うべく立ち上がった。だが翌77年、ナ・リーグ創設2年目にルイビル・グレイズが突如連敗し優勝を逃した。捜査で賭博師が4選手を買収したことが判明し、その1人で球界最高とされた投手のジム・デブリンが罪を告白、4人全員が永久追放された。
20世紀に入ると、どんなスポーツも賭け事が付き物となり、試合にまつわる事件が続いた。賭博師は賭けたチームの選手に金を掴ませ、相手投手に酒を飲ませ、捕球しようとする外野手の注意を逸らそうと銃撃もした。