3月15日夜、前々から気になっていた「渋谷らくご」に行ってきました。
2,500円で、複数人の噺家さんの落語を楽しめる、初心者にもやさしい落語会。
叶うなら、毎月の公演に欠かさず足を運びたいくらい。
毎月5日間にわたって開催!初心者も楽しめる落語イベント
「渋谷らくご」は、2014年11月に始まった落語会。その名のとおり渋谷・ユーロライブで定期開催されているイベントで、毎月5日間、合計10公演のスケジュール構成となっておりまする。
「落語」と聞くと、行かない人からすればハードルが高いイメージも強いのではないかしら。演芸場なんて入ったことないし、知識もない初心者が一人で足を運んで、はたしていいものか……という不安。事実、僕自身もそんな感じでしたしおすし。
その点、この「渋谷らくご」は全力でハードルを下げにかかっている、初心者向けの素敵イベント。僕も参加するのは今回が初めてで、しかも一人でふらっと寄った形なのですが、変に緊張することなく、映画館に入るようなノリで入れました。わぁい。
舞台に上がる落語家さんの持ち時間は、1人30分。1公演は長くても2時間、4人分の落語を聞くことができるので、“はじめての落語”にはぴったりなのです。それこそ、映画の短編集を1本見るような気分で訪れても、全く問題ないのではないかしら。
落語ファンが、友だちを連れていきたい落語会。
普通だと、公演時間の長い寄席か、人気のある落語家の一日だけの独演会、ということになるかもしれません。
チケットの確保が難しい、スケジュールを合わせるのが難しい、さらに、次に行くのも難しい。リピーターになるまで時間がかかります。
そこで渋谷らくごは、いま旬の落語家さんたちをメインに毎月5日間連続10公演。当日行けて、スケジュールが合わせやすくて、品質保証もバッチリ!
寄席と独演会のちょうどいいところを合わせていますので、初心者ひとりでも、初心者のお友達を連れていくのも最適な会です。
もちろん、落語ファンも楽しめる落語会です。(「渋谷らくご」公式読み物『どがちゃが』より)
開演前と終演後、周囲の会話を聞いていたかぎりでも、「落語好き」と「全く知らない友人」の2人で、連れ立って訪れていたお客さんが多かったように感じました。物は試しと連れて来て、実際に目の当たりにしてみたら「楽しかった!」と、概ね好評だった様子。
特に印象的だったのが、終演後、意外にも「初心者さん」のほうが興奮した様子で感想を話していたんですよね。「落語好き」の友人が解説を入れるまでもなく、「あの落語家さんのこういったところがすごくて、話の内容も最高におもしろかった!」と、存分に語っていた格好。
要するに、それだけわかりやすいネタが多く選ばれており、予備知識がなくとも楽しめる内容になっているんじゃないかと想像できる。同じく初心者の自分も、彼らの話の断片を小耳に挟みながら階段を下り下り、「ほんまそれなー」と、ちょいと後ろで頷くくらいでありましたゆえ。
もちろん、途中では「あの話が〜」とか「あの落語家さんが〜」という、前後の公演内容にツッコんで笑いを取るような流れもありましたが、置いてけぼり感はぜんぜんありませんでした。終演後は、企画者のサンキュータツオさんが壇上で補足説明・解説をしてくださるので、「そういうことだったのか!」と納得して帰れるのも大きい。とにもかくにも、“初心者向け”という印象です。
すごい一体感を感じられれば、お腹いっぱい
この「渋谷らくご」含め、自分が落語を聞きに行ったのはまだ数回。
それでも毎度すごいと思うのが、その「一体感」でござる。
この辺の記事でも書いたように、噺家さんとお客さん、会場全体が気づけばひとつになっているという、その“空気”のとてつもなさ。まくらで会場の空気を読み、時に「笑い」で、時に「期待」で、時に「恐怖」でもって、徐々に話の中へと客を引き込み、ひとつの雰囲気が醸成されていく。
そんな“空気”が一度できあがってしまえば、話を聴く側としては、何も自重することはない。笑いたいときに笑い、手を叩いて爆笑するも良し。意識して“空気を読む”必要はなく、むしろいつの間にか、自分が会場の空気と一体化していることに気付かされる。それが、本当に、すごい。
似たような「一体感」を実感できる場所としては、おそらく映画館やライブ会場のような空間が挙げられると思う。どちらも等しく、誰もが楽しむことを目的にその場を訪れ、スクリーンあるいは舞台という同じ方向を見て、一様に感情を動かされるエンターテイメント。
ただ、それら2つの空間においてネックとなるのは、必ずしも楽しみ方がひとつではないという点。一部の上映を除く日本の映画館では、あまりにオーバーなリアクションを取ったり、音を立てて飲食したりすることは、マナー面で好まれていないイメージが強い。ライブも、最前列にツッコんで、モッシュピットでヒャッハーするのが好きな人もいれば、後ろで壁に寄りかかって、まったりと演奏に耳を傾け楽しむのが好きな人だっている。
そこで「自分は自分、他人は他人の楽しみ方がある」と納得し、住み分けができていれば何の問題はございません。だけど、中にはそういった「楽しみ方の違い」によって衝突が起こるケースもゼロではなく、たびたびトラブルも散見される様子。
ネットの書き込みを見るかぎりだと、キーワードは“マナー”。どこまでを自粛の範疇とし、どこまで好き勝手に楽しんでいいのか――という問題なんじゃないかと思いますが……これが、なかなかに難しいようで。あまりに禁止行為を作りすぎても楽しめなくなっちゃうし、なんとも。
その点で「落語」は、壇上の噺家さんの“語り”ひとつで会場の雰囲気が同じ方向へと誘導され、その場に座るお客さん全体の一体感を作り出しているように感じました。最低限のマナーを守る必要は当然ありますし、まだ数回程度の体験であれこれと断言できるものでもないでしょうが。
――とまあ、あれこれ書くよりはもっと実際に足を運んで、もっともっと落語のおもしろさを知ってみたいと思った今日この頃。もしかすると、古典落語を聞いて「わからん!」とノックアウトされるかもしれないし、上方落語で別の魅力を発見するかもしれませんしおすし。
自分が観に行った、3月15日夜の演目。松之丞さんの講談に惚れた。
話があっちゃこっちゃ飛びましたが、「渋谷らくごはいいぞ」の一点だけは間違いござりませぬ。来月は、4月8日からの5日間の開催予定。当日の開演1時間前からでも当日券が買えるので、仕事帰りにでも、我が身ひとつでふらっとどうぞー。