【コラム】民族問題研究所に学ぶ「押し売り」のこつ

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 『親日人名辞典』を発行した民族問題研究所は、今回かなりおいしい思いをしたことだろう。教育の中立性違反だとか、学校の自律性侵害だといった批判にもかかわらず、辞典はソウルの小・中・高558校に配布された。1セット3巻の価格は30万ウォン(約2万8700円)なので、1億6700万ウォン(約1597万円)の売り上げだ。並の単行本なら1万部の販売に相当する。

 知り合いの出版関係者は「過去1年の間に15種類の本を出したが、7000部ほど売れたのが2種類あるだけ」と語った。現在、本を1万部売るというのはそれほどに難しい。その難しいことを、ソウル市議会とソウル市教育庁(教育委員会に相当)が、韓国国民の税金でしてやった。校長たちが「買ってくれ」と催促したわけでもなかった。

 ソウルのチョ・ヒヨン教育監(教育庁トップ)は先週「一部団体の抗議、購入校に対する告発の『脅し』にもかかわらず、583校中558校への『親日人名辞典』配布が成功裏に完了した」と発表した。チョ教育監は、辞典を配布した理由について「保守であれ進歩であれ、さまざまな観点の本が図書館に備え付けられるべきだと思うから」と語った。左派・進歩勢力が教学社の歴史教科書の採択を妨害し、教育現場を左派寄りの歴史観で画一化しようとしたことについてチョ教育監がどう思っているのか、気になる。第一線の学校の立場からすると、辞典を買わない場合にあるかもしれない教育庁の監査や経緯書の要求の方が、ずっと大きな「脅し」だったことだろう。特定の民間団体が作った本を公共機関が買ってやるというのは、特別扱いだ。こうした「押し売り」と「特別扱い」に対する最小限の釈明すら、チョ教育監の言葉から見いだすことはできない。

金泰翼(キム・テイク)論説委員
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