原発事故5年、まだ鼻血デマ−朝日新聞の狂気
鼻血の妄想はネット上では「笑い話」なのだが…(作者不明ながら鼻血ポスターを茶化したパロディ「脱げぱんつ」)
「ママ、なんで窓あけるの!放射能あるのに!」と泣き叫ぶ
朝日新聞が「核の神話:20福島から避難ママたちの悲痛な叫び」という、こっけいな記事を掲載した。田井中雅人記者(@tainaka_m)の執筆だ。彼の記事はまとまりが悪く下手と思うが、内容のレベルがここまで低いことに驚いた。
異様な記事を一読していただきたい。横浜弁護士会が開いた集会での自主避難の母親らの発言を垂れ流し、偏向した研究者の発言を取り上げている。
放射能について福島から、横浜に逃げた主婦の講演だ。この人は被ばくを避けるとして子どもに長袖を着せ、毎日、周囲とトラブルを起こしたという。
「そうこうしているうちに、娘が大量の鼻血を出すようになりました。噴出するような鼻血だったり、30分ぐらい止まらなかったり、固まりが出たり」
「子ども同士で「放射能がついてるから、触っちゃいけないんだよー」って注意しあっていた」
「外で遊べないストレスも強かったんで、車を2~3時間運転して山形県米沢市までわざわざ行って、娘に外遊びをさせました。福島から山形に入って、やっと車の窓を開けて深呼吸をするような状態でした。山形に入って私が車の窓を開けたら、寝ていた娘が起きてパニック状態になったんです。「ママ、なんで窓あけるの! 放射能あるのに!」って泣き叫ぶ」
私は「狂気」を感じたし、常識ある人は私と同じ感想を持つだろう。言うまでもないが福島の放射線量で鼻血が出るわけがない。母親の妄想により子どもが精神的に圧迫を受け、ストレスから健康がおかしくなった気の毒な状況である可能性が高い。私は放射線の恐怖よりも、「洗脳の恐怖」が印象に残った。
各地の弁護士会は東電の賠償を増やそうと運動している。これは弁護士ビジネスのチャンス拡大を意図しているのだろう。金儲けのためでなければ、こんなおかしな情報を人倫上、拡散するわけがない。つまり利害関係者だ。そのプロパガンダに朝日新聞のこの記事は積極的に荷担している。
そしてここで取り上げられた論点の古さに驚く。いずれも5年前に語られ尽くされた問題だ。これまで私は、アゴラ・GEPRや機会あるごとに以下の主張をした。事故後5年経過して健康被害は結局確認されず、これらは正しい意見であったと証明されたと思う。
「福島事故で健康被害は出ないし、年20mSvの被ばく基準は騒ぐ必要はない」
「自主避難は必要がなく、それをするのは震災直後には仕方がないにしても、現時点では愚行だ。特に母子避難を続ける母親は、情報弱者であり思い込みの激しさから、子どもの健やかな成長のために問題になる。行動を是正するべきだ」
「事故賠償には過剰な金額が出ている。地域社会の復興に効果がある半面、問題点も出ている。線引きが必要だ」
「事故を矮小化してはいけないが、恐怖とデマを過度に拡散してはいけない。危険というデマは福島と日本を穢すものであり、人々を傷つけ、復興を妨げる」
ところが朝日新聞は、「核と人類」という特別取材チームをつくってまで、「放射脳」の中で先鋭的な人の言葉を垂れ流し、問題をおかしな形で蒸し返す。福島を傷つけ、社会を崩壊させる悪意があるとしか思えない。「放射脳」とは、ネットスラングでからかい混じりで放射能パニックが過剰な人をさすが、ここまで異常な話の場合は使っても許されるだろう。
新聞記者はアホなのか?
朝日新聞の田井中雅人記者にツイッターで、「あなた頭大丈夫ですか。狂気の叫びをする人を引き留める普通の行動をなぜしないのですか。本当に鼻血が出ると信じているのですか」と感想を述べたら、ブロックをされた。
報道は「編集」という作業を伴う。多様な意見を反映させるのは当然だが、そこには当然、一定の常識の線引きがある。「鼻血」「狂気」は、選り分けるべき情報だろう。シンポジウムをそのまま流すことで責任逃れをしているつもりかもしれないが、田井中記者とこの記事を通した社員らは嘘と分かった上で情報を発信したら、倫理上、大変な問題である。
しかし「福島で鼻血が出た」と信じるほど、田井中記者らの知性が足りない、社会常識がない疑いもある。池田信夫氏の記事「低線量の線量計は「性能不足」なのか」で示されたとおり、朝日新聞の一部記者は原子力規制委員会の常識的な説明を分からず、誤報を垂れ流したようだ。
健全な民主主義の前提は正確な情報の流通だ。しかし日本のメディアはそれを担う資格を持つレベルにも達せず、デマを垂れ流す記者がいる。そもそもアホなのだ。「これは朝日が「左」だとか「反日」だとかいうより、おそろしい事実だ」。(この文章は上記池田氏記事より引用。まったく同じ感想)
メディアの収益構造が崩壊しつつある。その理由の一部には、このような異様な報道を、賢明な日本国民に見透かされ、「読む価値がない」と認識されている面もあるのだろう。たしかに鼻血デマを金出して読む必要はない。
「あはは、裸の王様じゃないか」。童話「裸の王様」では子どもたちが笑い、大人が気づく。社会の大半の人が、メディアのおかしな報道に「あはは」と笑うことが繰り返されているのに、中の人々は気づかない。メディア全体、またはそれぞれの会社が自壊するまで、分からないのだろうか。
石井孝明
経済ジャーナリスト
ツイッター:@ishiitakaaki
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