「 インバスケット」って何だか知っているだろうか?
簡単にいえば、シムシティのビジネス版。『いまから、君が社長をしなさい』は文字どおり「社長」になりきって案件処理のシミュレーションができる本だ。
社長がどのような仕事をしているのかを知らずして、どうして“できない”と考えるのか
《目次》
インバスケットとは
本書では「インバスケット」という、制限時間内に架空の人物になりきって、多くの案件処理を行うビジネスゲームの方式を使っています。
インバスケットは「なりきる」という共通項に焦点をあてると、シムシティのビジネス版といえるトレーニングだ。
著者の鳥原隆志は「株式会社インバスケット研究所代表取締役」として、いくつかインバスケット関連の書籍を出している。何冊か読んだが、本著が最も端的でおすすめだ。
インバスケット教材開発・研修・セミナーの 株式会社インバスケット研究所
鳥原さんは会社員のとき理不尽な社長命令に反論した際に「自分の思うとおりにやりたければ早く出世することだ」と上司に言われた。だったら会社のトップになってやろうと考え、実際になった。
社長になって気づいたことが「社長は決して頂上ではない」ということ。さまざまなステークホルダー、法令や官公庁、顧客に影響される社長業。社長になる前に、知っておくことはできなかったのか?
こういった経緯があるからか、『いまから、君が社長をしなさい』は著者にとっても随分気合いを入れた力作だろうと想像される。
本著の構成と読み方
本来インバスケットには正解はないし、選択肢も存在しない。しかし、本著は読みやすさを重視して「4人の社長候補が面接で現社長から課題を出される」というストーリー仕立てで展開される。案件は20個用意されていて、なかなか読み応えがある。
ここで薦めたい読み方がある。「解説を読む前に4人の答えを順位づけして、その理由を考えてみる」という方法、これをぜひやってみてほしい。
案件1:社長へのクレーム
例えば、「案件1」では①社長が交差点の信号を赤にもかかわらず渡っていた、②社長が禁止されているはずの1階から2階のエレベーターを使用した、という2件のクレームが総務に持ち込まれたという事例だ。
いやいや、しょぼい案件だな!とおもうだろうか。僕はおもった。
しかしよくよく考えてみれば、こういう性格テストのような案件の処理が最も重要なのかもしれない。案件1では人間性が試されていて、ここで社員の信頼を失うようでは経営どころではない。この件では、何ならマイナスな印象をプラスに転じさせるような対応をしたいところだ。
こういうヒューマンスキルというか、感情論も含めたトラブルの処理の仕方で経営の成否は分かれるのだろう。鳥原さんはそれが言いたくて案件1に、この一見しょぼいトラブルを持ってきたんだろうなと勝手に感心した。(まあ全然違うかもしれないが)