センバツ開幕 被災地に元気届けよう
毎日新聞
第88回選抜高校野球大会がきょう、阪神甲子園球場で開幕する。東日本大震災の発生から5年の節目の大会となる。野球ができる幸せをかみしめながら、力強いプレーで被災地に元気を届けてほしい。
ハンディ克服や地域貢献など野球の実力以外の要素も加味して選ばれる21世紀枠では釜石(岩手)、長田(兵庫)、小豆島(香川)の3校が出場する。
東日本大震災で親が犠牲になるか行方不明のままの野球部員が3人いる釜石は、全校生の3分の1以上が被災者でほとんどが今も仮設住宅で暮らしている。菊池智哉主将は「被災地に元気を、支援していただいた方に感謝を伝えられるよう全力を尽くす」と意気込む。
21年前の阪神大震災で校舎のある神戸市長田区が壊滅的な被害を受けた長田は、1月17日と3月11日に合わせて防災教育を重ね、音楽部が東北の被災地の子どもたちとの交流を毎年続けてきた。永井伸哉監督は「普通に野球や勉強ができることの幸せを考えてほしい」と部員に繰り返し話している。
大会第2日に釜石と対戦する小豆島は部員17人で甲子園の土を踏む。離島という事情に加え、少子化・過疎化という困難を乗り越えて出場を決めた。開会式では樋本尚也主将が選手宣誓でメッセージを発信する。同じ問題を抱える多くの地域へのエールになることだろう。
昨年の大会で北陸勢としては春夏通じて初優勝を飾った敦賀気比(福井)は、今まで2校しか達成していないセンバツ連覇に挑む。
これまで紫紺の優勝旗を手にしていない19道県から10校が出場する。昨年に続いてセンバツ優勝の全国地図を塗り替えるチームが現れるのかも注目される。
センバツ大会は関東大震災の発生から半年後の1924年に産声を上げ、復興の象徴的な大会となった。その第1回大会の覇者である高松商(香川)が20年ぶりに出場する、また優勝4回の東邦(愛知)が11年ぶりに出場し、龍谷大平安(京都)は最多出場記録を40回に伸ばした。古豪校の登場は、戦前から刻み続けたセンバツの歴史や意義を見つめ直す好機をもたらしてくれる。
センバツ出場校は成績や技術だけでなく、野球に対する姿勢や仲間への思いやりも含めて総合的に選ばれる。何よりもフェアプレーが重んじられることは言うまでもない。意図的に体当たりするなどのラフプレーは避けなければならない。大会後半の休養日の設置などで進めてきた選手の健康管理にはさらに取り組むべきだろう。常にベストコンディションでフェアプレーに徹してほしい。