北朝鮮の挑発 世界に背向ける独裁者
毎日新聞
韓国で米韓合同軍事演習が始まって以降、北朝鮮が挑発的行動を繰り返している。
北朝鮮に対する圧迫が強まっているのは、国際社会の制止を無視して核実験と長距離弾道ミサイル発射を強行したからだ。国連安全保障理事会の厳しい制裁決議は、国際社会の怒りがいかに強いかを示している。
ところが北朝鮮は国際社会の警告に耳を傾けるどころか、むしろ背を向けようとしている。
18日には中距離弾道ミサイル「ノドン」を日本海へ発射した。射程1300キロのノドンは、日本にとって直接の脅威である。日本として決して容認できるものではない。
北朝鮮の国営メディアはこれに先だち、弾道ミサイルに搭載する弾頭を大気圏に再突入させる模擬実験が成功したと報じた。金正恩(キムジョンウン)第1書記が立ち会ったという。
核兵器開発を進める科学者を金第1書記が指導した場面として公開された写真には、鈍く銀色に光る大きな球が写っていた。核弾頭を意識したように見える物体だった。
米国や韓国は2月のミサイル発射後、北朝鮮の技術水準について「弾頭を大気圏に再突入させる技術はまだ獲得できていない。核兵器をミサイル弾頭に搭載する小型化にも成功していない」と評価した。
再突入実験や銀色の球は、米韓による低い評価への反発だろう。
金第1書記について憂慮されるのは、慎重さに欠ける感情的行動が目立つことだ。最近は、核ミサイルの開発という本音まで隠さないようになってきた。
金第1書記は弾道ミサイル発射訓練を視察した際に、「核兵器研究部門とロケット研究部門の協力をさらに強化し、核攻撃能力を絶えず発展させるべきだ」と語った。「人工衛星打ち上げ用のロケット開発」という従来の主張がまやかしであったことを認めたに等しい。
金第1書記はさらに、米韓演習を「露骨な核戦争の挑発」と決めつけ、核攻撃能力を高めるための実験を続けるよう指示したという。
北朝鮮は5月の朝鮮労働党大会を意識しているようだ。緊張を高めて国内を引き締めつつ、米国との対決が経済難の原因だと国民に教え込む。北朝鮮がこれまで何回も繰り返してきたことだ。
だが、そうした行動は苦境を脱する抜本策にはならない。
核・ミサイル開発を続ける限り、北朝鮮に対する制裁が緩和されることはない。金第1書記は国民の生活向上に心を砕く姿勢をアピールしてもいるが、核開発と経済成長という二兎(にと)を追おうとする路線に無理があることは自明である。