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米グーグル傘下の英企業が開発した囲碁用人工知能(AI)の「アルファ碁」…
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米グーグル傘下の英企業が開発した囲碁用人工知能(AI)の「アルファ碁」が、世界のトッププロの一人、李世ドル(イセドル)九段に対し4勝1敗の成績をあげた。
囲碁は1局の展開が宇宙にある原子の数より多く枝分かれするといわれ、スーパーコンピューターでも読み切れない。
計算が及ばない局面では、経験や直感がものをいう。そのため、AIはチェスや将棋でトッププロを破った後も、囲碁では達人に勝てずにいた。
だが、アルファ碁は先を読む能力に「経験」を加えた。名棋士の対局記録を10万局も入力し、3千万回もの自己対局で研究を重ねる「深層学習」で「直感」を磨く方法を組み込んだ。
その成功は、AIの進化を象徴する画期的なできごとだ。
小説や映画が描く「機械が人間を支配する社会」を予感し、不安を抱く人もいるようだ。
しかし、囲碁のルールや勝利のための戦略は、人間がアルファ碁に授けた。「トッププロも負かすAIの開発」は、人間の新たな勝利とも言える。
AIが思考の目的を自ら見つけることはまだ考えられない。目的を与えるのは今のところ、人間の役割である。
だからこそ人間はAIの目的や使い方について、深く考えなければならない地点にいる。
自動車の自動運転への応用など期待される分野がある一方、軍事利用や市場操作といった危うい問題も少なくない。
さまざまな職種で人に代われば、人手不足の解消になるか、失業を生むことになるか。AIとどんな社会を築くか、多角的に考えていく必要がある。
AI研究に人間探究の意義があることも指摘しておきたい。
囲碁は「手談(しゅだん)」とも呼ばれる。着手には対局者の意図だけでなく性格や人間性まで表れ、対話を重ねるようだからだ。
突然現れた強豪のようなアルファ碁について、張栩(ちょうう)元名人が「もっと対局を見たい。囲碁の神髄に近づけるかもしれない」と語ったのはもっともだ。その打ち筋をトッププロが独自に解釈できれば、人間の囲碁自体が大きく進化するだろう。
人は、自分のことも他人のことも本当には分かっていない。自省や意思疎通の積み重ねで「理解した気になっている」だけだ。
AI研究は人の脳の働きを一つずつ定式化する試みであり、脳の新たな理解につながる。
さまざまな経験を積み、学びながら、自らの価値観や目的を確立する「赤ちゃん脳」の理解が、究極の目標の一つなのだ。
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