井上ひさしさん=共同
劇作家、井上ひさしさん(1934~2010年)が学生時代にフランスの戯曲を翻訳した未発表の直筆原稿が19日までに、見つかった。妻のユリさんが今年1月に東京都内の古書店から購入したもので、22日発売「オール読物」4月号(文芸春秋)に全文が掲載される。
見つかったのは、フランスの劇作家モンテルランが1945年に執筆した戯曲「サンチャゴの騎士団長」の翻訳で、本文は原稿用紙87枚。本名の井上廈名で、「讃血亜護騎士団長」と記された表紙が付けられるなど、自ら製本していた。内容は16世紀のスペインを舞台に、宗教上の問題などで悩む騎士団長の姿を軽妙に描いた3幕劇だ。
井上さんが残したノートの記述などから、上智大に在学中の57年ごろに、同大のポール・リーチ教授の依頼で翻訳したとみられる。ユリさんは「会話の面白さや、手作りの製本がひさしさんらしい」と話している。
井上さんはその後、74年に同名のオリジナルの小説「サンチャゴの騎士団長」を発表した。リーチ教授がモデルの一人とされる連作短編集「モッキンポット師ふたたび」に収録されている。
原稿は来月9、10日に山形県川西町の川西町フレンドリープラザで開かれる井上さんの文学忌「吉里吉里忌」に合わせて展示される予定。〔共同〕