涙ぬぐう希望の手
大震災から5年の命日。仕事で実家に預けていた長男佑哉(ゆうや)君(当時2歳)を津波で亡くした宮城県東松島市の介護施設職員、佐藤美貴子さん(38)は、市内の寺で営まれた法要に夫強(つよし)さん(47)、長女百華(ももか)ちゃん(3)と参列した。
本堂に響いていた読経が終わり、参列者とともに歌い始めると、思わず涙がこぼれた。「だって、ここに佑哉がいないから」。助けられなかった後悔の念が込み上げる。「なんで泣いてるの」。傍らにいた百華ちゃんが小さな手で涙をふいてくれた。
震災後に生まれ、「100歳まで生きてほしい」と名付けられた百華ちゃん。暗く沈んだ家に笑い声を運び、兄の年を超えるまでになった。佑哉君の面影と共に暮らしてきた夫婦はいつか、仏壇の遺影に語りかける娘に兄がいたことを伝えようと思っている。【森田剛史】