イ・セドル、'怪物'と戦って怪物にならない'人' - ノーカットニュース
原文記事:イ・セドル、'怪物'と戦って怪物にならない'人' - ノーカットニュース
▲イ・セドル9段が去る15日グーグル人工知能(AI)AlphaGoとの第5局に先立ち娘ヘリムさんと共にしている。(写真=韓国棋院提供)
'怪物と戦う人はその過程の中で自らも怪物にならないように注意しなければならない。' -ニーチェ最近封切りした映画'君を待って'を観て新たに再確認した言葉。 連鎖殺人魔から父を失ったある女性のすさまじい復讐を描いたこの映画がニーチェの言葉を主なメッセージで扱いながらも、これを劇にどれくらいよく溶かして出したかの問題は他のところで確かめてみる機会があるだろう。ここでは映画を観終わった後イ・セドルを思い浮かんだ理由を探ってみよう。 最近囲碁人工知能(AI)プログラム'AlphaGo'と世紀の対決を行ったプロ囲碁棋士イ・セドル9段の話だ。イ・セドル9段は去る15日ソウル、光化門(クァンファムン)にあるホテルで開かれたAlphaGoとの第5局を負けて総合成績1勝4敗で大会を終えた。 彼は対局の後の記者会見で"ある瞬間から'私が囲碁を楽しんでいるか?'という疑問を感じる瞬間もあったが、今回の対局だけは思う存分、間違いなく楽しんだ"と所感を伝えた。
'人間vs機械'の対決で全世界の耳目が集中したために肩に担った負担感がとても大きかったはずなのだが彼は五回の対局中ずっと毅然とした姿を見せた。 それと共に今回の敗北を自省のきっかけにするという心を伝えたのだ。今回の対局は、昨年10月進行されたAlphaGoとヨーロッパ チャンピオン 樊麾2段の棋譜を見た囲碁専門家たちは"AlphaGoの囲碁実力がイ・セドル9段のような最高手には大きく及ばない"としてイ・セドル9段の圧勝を占った。 イ・セドル9段もやはり自身の5対0勝利を確信した。 表面にあらわれたAlphaGoの資料を通じて得た客観的な判断がそうであった。ところが実際に蓋が開けられるとすぐにAlphaGoに関するすべての判断が誤っていたことがあらわれた。 AlphaGoの実力は5ヶ月前樊麾2段と対局を行う時とは天と地の差であった。イ・セドル9段は去る9日開かれたAlphaGoとの最初の対局で186手で中押し負けにあって衝撃を抱かせた。 当時イ・セドル9段は"AlphaGoにとても驚いた。 負けると思ってはいなかった"ながらも"今日の囲碁は序盤の失敗が最後まで続いたようだ。 プログラムを作った方々に深い尊敬心を伝えたい"として敗北をきれいに認めた。ところがイ・セドル9段が2、3局でも相次いでAlphaGoに負けて3連敗にあって、対局場外では'不公正ゲーム'論議がおきた。 "イ・セドル9段がAlphaGoの最近の棋譜など情報を得られなかったという点、AlphaGoがCPU(コンピュータ中央処理装置) 1202個・GPU(グラフィック処理装置) 176個を搭載したという点を上げて、イ・セドル9段にとって極度に不利な対局環境だった"ということだ。それにもかかわらず、対局に臨むイ・セドル9段は対局の後の記者会見を通じて絶えず相手の実力を認めて自身を振り返る姿勢を見せた。 "とても驚いたのは昨日で充分で、今日の囲碁は序盤から先んじたことがない完敗であった。 AlphaGoのおかしな点を発見できなかったし今日はAlphaGoの完勝であり完ぺきな囲碁だった(第2局)。"
"結果的に第1局は勝利しにくかった。 AlphaGoの能力を誤認した。 勝負は第2局で出たようだ。 序盤意図のとおり流れたが機会をたくさんのがした。 第3局は囲碁的経験が多い私も激しい圧迫感と負担感を感じるほかはなかった。 それを勝ち抜くには能力が不足した(第3局)。"◇ '人間'イ・セドル、人工知能との対決通じて'共存'のための'自省'の価値見せて▲イ・セドル9段と人工知能AlphaGoの最後の第5局が繰り広げられた15日ソウル、杏堂洞(ヘンダンドン)イ・セドル囲碁研究所で研究生が中継放送を見守っている。(写真=ファン・ジンファン記者/ノーカットニュース)
科学者はAlphaGoを"既に高速演算をしたコンピュータとは違って、人間が持った直感と洞察をまねた人工知能"と口をそろえる。 自ら学習して、囲碁に勝つために一手一手の価値を判断するAlphaGo。
この囲碁人工知能は開発者さえその限界を正しく知ることができなかったという点で'怪物'と呼んでも構わないように見える。 実体を確かに表わさないことによって人々の想像力を刺激して恐れで震えさせることが怪物である理由だ。AlphaGoという怪物と戦う渦中にもイ・セドル9段は、ニーチェの表現のとおり自ら怪物にならないように絶えず警戒する姿を私たちに見せた。
自身の敗北を合理化する目的で相手の実力を決して蔑視せず、周辺で起こった不公正ゲーム論議によって勝負を変質させようとする事もなかった。 かえって3連敗の後、夜を明かして同僚囲碁棋士からAlphaGoに勝つ解決法を聞いた彼は最後には"自分の碁を打てば良い"と話したという。いよいよAlphaGoとの第4局で白中押し勝ちで初勝利を取り出したイ・セドル9段は記者会見で"今回白番で勝ったので5局は黒番で勝ちたい"として勝敗を離れて自身が願う価値ある挑戦に臨む態度を見せた。
メディアでは"人間が機械から勝利した"として特筆大書する時イ・セドル9段は自身の挑戦を継続したわけだ。イ・セドル9段とAlphaGoの対局が皆終わった後、私たちはメディアを通じて人工知能が未来文明に及ぼす多様なシナリオに接して"機械に働き口を奪われるだろう" "人間が機械の判断に依存する日がくるかもしれない"などの懸念を出した。 人工知能がもう一つの嫌悪の対象として作られていく流れに乗っていることだ。未来学者チョン・ジフン慶熙(キョンヒ)サイバー大ITデザイン融合学部教授はこのような懸念に対して"ひとまず人間の方が自省しなければならなくないだろうか"という印象的な話をした。"今までは競争を通じて人を踏んで立ち上がらなければならないという認識が広まってきました。 継続的な成長のために絶えず貪欲を追求する事を当然に思ってきたのではないですか。
結局は共生、共生と関連してバランスを合わせることができる見解が重要に見えます。 技術開発もこのような脈絡で進行されるならばコード一つを級んでも作る人々の意図が入り込むほかはありませんから。"怪物と戦いながらもその中で自ら怪物にならないところは、私たちが怪物と規定したその何かの正体を知っていくところにあるだろう。 実体が分からないから押し寄せる恐怖心と嫌悪感はその実体を表わすことによって克服できることだ。怪物の実体を表わすことは恐怖心と嫌悪感を直接的に感じる'私たちの' '私'という自身を先に知っていくところから始める事ができないだろうか。結局'人間'イ・セドルは人工知能AlphaGoとの対決で'共存'のための'自省'の価値を全身で見せてくれた事になる。 囲碁界で彼の次の行動が期待される理由もここにある。