北朝鮮がきのう早朝、日本海に向けて弾道ミサイル2発を発射した。日本全土をほぼ射程に収めるノドンとみられる。

 ことしに入り、核実験と事実上の長距離弾道ミサイル実験をし、国連安保理が厳しい制裁決議を出したばかりだ。今回も、明確な決議違反である。

 国際社会の声にまったく耳を傾けようとせず、独善的な行動をとり続ける北朝鮮に、改めて強い憤りを覚える。

 米国と韓国はいま、韓国内で史上最大規模の合同軍事演習をしている。北朝鮮は毎年、この演習に反発し、中止を求めてきたが、核とミサイルの実験という自らの暴走が規模の拡大をもたらした。自業自得である。

 北朝鮮は、米軍が演習に特殊部隊を参加させたことから、金正恩(キムジョンウン)・第1書記を狙った「斬首作戦」だと非難している。韓国大統領府や米本土などへの先制攻撃に言及したほか、核弾頭の爆発実験や、その弾頭を載せる弾道ミサイルの発射実験をすると新たな脅しをかけている。

 演習に対抗するかたちで言動をエスカレートさせているが、実際には米国に対話を呼びかける強いメッセージだろう。

 それと同時に、5月に予定する36年ぶりの朝鮮労働党大会に向けて国内を引き締めたいという思惑も透けて見える。

 米大統領選の候補者選びが注目されているすきに、核・ミサイル開発を進め、核保有国として米新政権とわたり合うつもりかもしれない。

 だが、無謀な振るまいを続けてきた金正恩政権に対し、国際社会はすでに根強い不信感を抱いている。さらなる挑発の繰り返しは、米国との本格的な対話を遠のかせるだけだ。

 国内の結束も、これまでのように強まるかどうか疑わしい。先の安保理決議による制裁を中国がどれだけ実行するかによるが、北朝鮮経済が少なからぬ打撃を受けるのは間違いない。

 北朝鮮の構造上、すぐに指導部が痛みを感じる事態にはなりにくい。だが、すでに事実上の資本主義が流入しており、いったん豊かなモノを手にした人々は、生活水準が落ちれば体制への不満を募らせるだろう。

 北朝鮮メディアは最近、「自らの力で前途を切り開く」ことの重要性を強調する。制裁による影響に国民を備えさせる狙いとみられるが、祖父や父に比べて、カリスマ性に欠ける正恩氏が、安定を維持できるのか。

 核にせよ、ミサイルにせよ、成算のない賭けにすぎない。正恩氏はその愚かさを深く認識すべきだ。