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【社会】

高校教科書検定結果 「集団的自衛権」に多数意見

 文部科学省が十八日に検定結果を公表した高校教科書(主に一年生用)で、二〇一四年に閣議決定された集団的自衛権の行使容認をめぐり、初めて検定意見が付いた。文科省は「十八歳選挙権も認められ、高校生により正確なことを教える必要があると考えた」などと説明するが、修正後の記述は、これまでの政府の主張に沿ったものが多い。 (上田千秋)

 清水書院は、政権が掲げる積極的平和主義を「広範な地域で自衛隊の活動を認めようという考え方」と記述し、「生徒が誤解する」と、修正を求められた。その結果「国際社会の平和と安定および繁栄の確保に、積極的に寄与していこうとするもの」と変更された。

 文科省は「こちらは指摘をするだけで、どう修正するかは出版社の判断」とするものの、ある教科書会社の担当者は「政府見解に従って書かないといけないような感じを受けた。集団的自衛権は政権が力を入れているテーマなので、検定意見は付くだろうと思っていた」と明かす。

 集団的自衛権の行使容認については、世界史A・Bと日本史A、現代社会などの三十二点中十九点が取り上げ、検定意見は五点の八カ所に上った。

 意見は、大学教授や教員らでつくる教科用図書検定調査審議会(検定審)が教科書会社に対して出す形になっている。ただ、文科省職員の調査官が作成する原案がそのまま採用される割合が例年高く、今回は86・7%を占めた。

 昨年度まで検定審の委員を務めていた国学院大の上山和雄教授(日本近現代史)は「委員の中でも本当にそのテーマに詳しい人は一握り。間違いでなければ指摘はしにくく、調査官の意見を覆すのは難しい」と話した。

◆「歴史観を歪曲」韓国が抗議声明 「慰安婦」言及せず

 【ソウル=上野実輝彦】韓国外務省は十八日午前、日本の高校用教科書の検定結果に対し「歪曲(わいきょく)された歴史観を盛り込んだ教科書を検定通過させたことに強く憤り、是正を要求する」と抗議する声明を発表した。

 ただ、声明には旧日本軍慰安婦問題への言及はなく、竹島(韓国名・独島(トクト))を「日本固有の領土」とする教科書の表現が増加したことのみを「不当な主張」と批判。「正しい歴史を教えることは、過去に苦痛を受けた周辺国への責務だ」と主張する一方で、慰安婦問題を外交当局間の争点にするのは避け、昨年末の両国政府間合意に配慮したとみられる。

 声明は「新たな韓日関係を開くため、努力を見せていくことを求める」との表現にとどまった。

 韓国外務省の鄭炳元(チョンビョンウォン)東北アジア局長は十八日午後、在韓日本大使館の鈴木秀生総括公使を呼び抗議したが、日本側によると領土問題への抗議が中心。昨年は別所浩郎(こうろう)大使に抗議しており、今年は抗議の度合いを弱めた。

◆「釣魚島に主権」中国、領土で反論

 【北京=秦淳哉】日本の文部科学省が検定した高校用の教科書に、沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)が「日本固有の領土」と表記されていることに対し、中国外務省の陸慷報道局長は十八日の定例会見で「中国が釣魚島とその付属する島に固有の主権を持つことに議論の余地はなく、この立場は明確に一貫している」と述べ、反論した。

 陸氏は「教科書問題の本質は、日本が過去の侵略の歴史を正しく認識し、対処するかどうかだ」と指摘。「若い世代に正しい歴史を教育することで、アジア隣国と国際社会の信用を得ることを中国は一貫して主張している」とも述べた。

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