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【社説】

安保法を問う 廃止法案審議に応じよ

 安全保障関連法の成立強行からきょうで半年。野党側は廃止法案や対案を提出したが、安倍政権側は審議に応じようとしない。このまま「無視」を続けるつもりか。議会制民主主義の危機である。

 きょう会期百五十日間の折り返し点を迎えた通常国会。一月に行われた安倍晋三首相の施政方針演説に対する各党代表質問では、民主党の岡田克也代表が、集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法を憲法違反と断じ、廃止法案と対案提出の意向を表明。首相は「全体像を一括して示してほしい」と答弁した。

 民主党と維新の党は二月十八日、対案として領域警備法案など三法案を、その翌日、両党を含む野党五党が安保関連法の廃止法案を衆院に提出した。あれから一カ月。廃止法案と対案は国会で全く審議されず、政府は安保関連法を二十九日に施行する予定だ。

 与党が圧倒的多数を占める衆院で野党提出法案が審議すらされず廃案になることはよくあることではある。ましてや政権が反対を押し切って成立を強行した法案だ。廃止法案や対案を審議すれば、自らの非を認めたことにもなる。

 しかし、「全体像を一括して示してほしい」として対案提出を促していたのは首相自身である。対案提出を促しながら、提出されたら審議に応じようとしない。こんなことがまかり通るのなら、議会制民主主義が機能するはずがない。

 安倍政権は野党が求める廃止法案と対案の審議に応じるべきだ。

 共同通信が二月に行った世論調査では、安保関連法を「廃止するべきでない」は47%で、「廃止するべきだ」は38%だった。

 安保関連法の存続論が廃止論を上回るが、差はわずか9ポイント。成立五カ月後の調査にもかかわらず、四割近くが廃止すべきだと答えていることにむしろ注目したい。

 首相は「国民のさらなる理解が得られるよう、丁寧な説明に努める」と繰り返し述べてきたが、説明を尽くしたとも、理解を得たともいえないことが、世論調査に表れているのではないか。

 若者グループ「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動、シールズ)」など二十九の団体は、安保関連法廃止の請願提出を目指して全国で署名活動を展開している。目標は五月三日の憲法記念日までに二千万筆だ。

 主権者である私たち国民の声を結集すれば、大きな力となる。必ず国会に届くと信じたい。

 

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