トップ > 中日スポーツ > 大相撲 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【大相撲】

北の富士さん「もし琴奨菊Vなら丸刈りになる」 稽古不足だ!春場所直前展望で仰天公約

2016年3月18日 16時2分

「稽古不足の琴奨菊が優勝したら…」。覚悟の丸刈り宣言を行った北の富士勝昭さん

写真

 初場所で日本出身力士としては10年ぶりの優勝を果たした大関・琴奨菊。5日目を終えて4勝1敗と、優勝戦線にしっかり残っています。

 …というわけで今、話題になっているのが、初日の前日、12日に紙面掲載された「北の富士の大相撲展望」。NHKでの解説でおなじみの元横綱・北の富士勝昭さん(73)による恒例企画なんですが、ここで前代未聞の提案が飛び出しました。多くの大相撲ファンが連続優勝での横綱昇進を期待していることを踏まえた上で、初優勝の祝賀ラッシュで過密日程に追われたニューヒーローの稽古不足をバッサリ。「言いにくいことを語った以上、私も責任を取ろう」と宣言し、こうぶち上げたのです。

 「琴奨菊もし優勝したなら、丸刈りになりましょう」

 はたして、二度目の断髪式が行われることになってしまうのか…!? いつもは紙面のみ掲載ですが、春場所の盛り上がりの一助になるなら、とご本人からWeb掲載の快諾をいただきました。全文公開します。

  ◇   ◇

<3月12日付紙面から>

【春場所あす初日・北の富士の大相撲展望】

 初日が待ち遠しいなんて気持ちは何年ぶりだろうか。日本人が優勝の二文字を忘れてから10年。その間、何人かの新大関、新横綱が誕生しているので、まったく浮き浮きした気持ちにならなかったわけではない。だが、今場所は少し複雑な感情がどこかにあって、妙な気持ちで初日を迎える。この気持ちをみなさまは分かってくれますか?

 大相撲ファンの多くは琴奨菊が連続優勝して横綱になったらいいなと多分思っているはずです。そうでしょう、それでいいのです。それがファンの心理というものでしょう。しかし、私は60年この道一筋に生きてきたプロとして、そんな気楽な事は考えられません。

 不安ばかりが先に立ってしまい、優勝して横綱昇進というような最良の予想が、どうしてもできないのであります。大事な場所に向かおうとしているのに、縁起でもない事を書くのは誠に申し訳ないのですが、まず私の話を聞いてください。

 なぜ私が心配をするかですが、先場所の優勝は多くのファンの方々に喜んでもらいました。でも、それ以上に本人と関係者が喜び過ぎたようだ。今までは地味で目立たない大関が一躍人気者になり、過密なスケジュールに追われたようです。そして本格的な稽古を始めたのが3月の8日から。わずか一週間足らずの稽古で綱とりの場所を迎える琴奨菊の神経を、どうしても理解できません。

 先場所の相撲は出来過ぎなのです。うまく行きすぎたと思った方がいいのに、場所前のコメントも自信満々なのには驚かされる。私もだんだんと頭に血が上って来たようだ。

 「稽古はやっていないがトレーニングはしっかりできているから心配していない」と述べてもいるが、本当にそう思っているなら相撲を甘く見過ぎている。何やらヤカンの重いやつで体幹を鍛えているらしいが、そんなもんで強くなれるのなら苦労はない。相撲勘は実際に土俵で稽古しなければ体が反応しないのは、大関までなった力士なら分かっているはずだが、お手並みを拝見するしかない。

 横綱昇進を狙っているらしいが、全勝か1敗までの高レベルが要求されよう。大関昇進後の成績も不安定で、かど番の多さもネックになろう。3横綱がそろっているし、年齢から考えても無理にはつくる必要もない。

 ここで少し前向きな話をしよう。もし、10日目まで全勝で行けたなら、可能性が出てこよう。気分が乗ってきたら初場所の再来があるかもしれない。前に出る力士は調子づくと怖い存在となる。

 しかし、三役、幕内上位の顔触れを見ても、楽な相手は皆無である。序盤につまずくと散々たる成績になりかねない。やってみなくては分からないが、私はどうしても稽古不足が気になってしまう。もし、今のトレーニングを重視した力士が結果を出すと、現在の稽古方法が根本的に覆されかねない。それでなくても最近の力士は稽古量が足りないのに、困ったものだ。

 私は古い人間なので、土の匂いのする力士、例えば稀勢の里にはぜひ頑張ってもらいたいと思ってしまう。彼も今年30歳。それほど時間があるわけではない。今年が勝負だろう。特別元気な力士はいないと聞く。チャンスだ。優勝を狙ってもらおう。琴奨菊にできて稀勢の里にやれないはずがない。気持ち次第である。びくびくするな。自信を持って前に出よ。今場所は私も応援に回ろう。

 白鵬もぜひ優勝したいだろう。年内に40回目の優勝を決めたいと豪語している。もう3場所も優勝から遠ざかっているのは彼のプライドが許さないだろう。日馬富士は相変わらずどこか痛いらしい。鶴竜もひっそりと稽古に精を出しているようだ。照ノ富士のけがは意外と長引いてしまっている。もうあの強引な相撲は見られないかもしれない。

 人気力士たちは寂しく再起する。逸ノ城の話は最近ほとんど聞かなくなってしまった。それでも春場所のチケットはすでに完売とか。荒れる春場所と昔はそう言われていた。しかし、優勝は横綱、大関陣から出ることは間違いないと思う。

 何といっても問題は琴奨菊だ。私も男だ。ブーイング覚悟で言わしてもらおう。横綱昇進はかなり難しい。人事を尽くして天命を待つというように、彼は本当に努力したのだろうか? 早ければ8日目あたりにはある程度の結果が出るだろう。人間良いことばかりそうは続かない。余談だが私は2度目の優勝まで4年かかってしまった。私も言いにくいことを語った以上、責任を取ろう。琴奨菊がもし優勝したならこの白毛頭を差し出すつもりだ。丸刈りになりましょう。そんな姿見たくもない? すみません。

 それでは今場所、大いに楽しんでもらいましょう。(元横綱)

 

この記事を印刷する

PR情報

閉じる
中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ