誰しも自分の幸せのために自己主張する。「子供を持つ女子社員」と「持たない女子社員」の場合も、それぞれが幸福を求め、ぶつかり、つばぜり合いを繰り広げている。彼女たちの切実な思いとは。
山口智子に喝采
その発言がここまでの波紋を呼ぶと予想した人は少なかっただろう。女性誌の関係者が言う。
「私のまわりの独身女性たちの間では、『よくぞ言ってくれたと思う』『ああいう意見を誰かが言わなきゃいけなかったんですよ!』と物凄い共感と称賛の嵐でした。『産まない女子』たちの中には、思っていても口にはしづらい不満がたくさん溜まっていたんですね」
山口智子(51歳)といえば、'90年代『ロングバケーション』『王様のレストラン』といった人気ドラマに数多く出演してきたトレンディー女優の代名詞。その生き方に多くの女性が憧れてきた「かっこいい女性」の見本のような存在だが、そんな彼女が女性誌『FRaU』の3月号のインタビューで、自身に子供がいないことについて、こう明かした。
〈私はずっと、子供を産んで育てる人生ではない、別の人生を望んでいました。今でも、一片の後悔もないです〉
「女の人生に、子供がいないという選択肢があってもいい」
このメッセージに敏感に反応したのが、山口と同じように「子供を持たずにバリバリ働く女性」=「産まない女子」たちだった。全国各地で働く彼女たちから、支持の声が続々と上がったのである。いったいなぜこれほどまでに共感が集まったのだろうか。
女性が自身の得意分野を生かしてキャリアを積み上げる重要性を説いた『女性職の時代』などの著書がある、ビジネスアナリストの中川美紀氏が分析する。
「いまは少子化の時代。どうしても『子供を産むことが偉い』となりがちな中、働きながら子育てをする『ワーキングマザー(WM)』の評価が高まってきました。政権も『女性の活躍』を掲げ、女性たちに『子育てと仕事の両立を』とやたらと言うし、子供を持たない女性は肩身が狭かった。
ですがその一方で、WMが産休や育休を取る場合には、後任の人事補填が行われることも少なく、子供を持たない女性がその尻拭いをしてきたという現実もある。山口さんという、女性の生き方のモデルとなるような人が発言したことで、『子供を産まない人生を誇ってもいい』といった、秘めてきた胸の内が、社会にどっとあふれ出したのではないかと思います」