この2、3日、成り行きを見守っている、杉並区議会議員のアレなブログや補助金の件について、不動産屋さんのブログとブコメ読んで、なんとなくこういうことかなと言うのを。
realtor-readyabooks.hatenablog.com
1 なぜ、新しく社会福祉法人を作ったか
問題の明愛会という社会福祉法人は、今回補助金が充当された保育園を新設するために、新しく設立した社会福祉法人なのでは、と思います。
一昔前は、保育園は社会福祉法人にしか設立・運営できなかったのですが、今は学校法人や株式会社でもできるようになりました。土地所有者である学校法人山本学園は、隣にある明愛幼稚園の運営者のようなので、同法人で保育園をそのまま運営してもよさそうなものですが、上記の不動産屋さんがリンクをはっている要綱を見ると、補助金の対象となるのは社会福祉法人のみのように読めるので、補助金をゲットしたいから新設したのでは、と愚考します。
個人的には、公益施設を建てるわけですし、社会福祉法人は利益をストックできませんので、まぁ、もらえる補助金はもらえばいいんじゃないかと思います。杉並区は常に保育園が足りないエリアですしね。
2 なぜ、土地の所有者から借地する、という面倒くさい方法を取っているか
一般的に解釈すると、新設の社会福祉法人に土地を購入する資金は無いと考えるのが普通です。したがって隣接する明愛幼稚園を経営する学校法人山本学園(こちらは昭和29年設立とHPにありましたのである程度の資金余力もあると推察できます)が土地を購入し新設する社会福祉法人に借地する、という方法を取っているのだと考えることができます。
これは割と一般的なことです。社会福祉法人とか議員とか出てくるから「悪はどこだ」となりがちですが、中小法人が息子に会社を継がせる時や新規事業を進める時などに新しい会社を作るのと同じです。社会福祉法人は営利事業はできませんが学校法人は可能ですから、長く幼稚園を経営してきた結果の蓄財で土地を買う資力があっても全然おかしくないと思います。ご一族で幼稚園を経営し続けてこられていたのなら、昨今の保育園足りない問題(杉並区はもうずーっと保育園足りない区として有名なんです)の一助となれば、と、保育園経営に乗り出しても全然不思議でもないし立派なことだと思う。
悪意をもって解釈すると、借地料の金額や受け取り方法についての取り決めは、借地人と土地所有者の間で任意に自由に決定することができますので、「相場よりも多い借地料」という名目で、補助金(や保育園の上前)を、学校法人の方に還流させているのでは、という邪推も可能といえば可能です*1。
ただし、現実的には幼稚園も保育園も濡れ手に粟ってほど儲かるもんではないですし、社会福祉法人については毎年財務状況の公表が義務化されたこともあり、おかしなカネの動きがあれば事業の停止や認可取り消しというペナルティもあります。
それに、借地料は二者間で自由に決められるとはいえ、あまりに市場とかけ離れた借地料の場合は、税務署がピーンときて、鬼より怖い税務調査などでぎりぎりと締め上げられて、場合によっては追徴税取られたりすることもあるので、そこまでの汚い邪推はしなくてもよい(もし汚いカネの動きがあるなら、あんな脇の甘いブログを書かれるような方なのですぐにバレそうです)かなとも、思ったりします。
図にするとこんな感じ。パワポでスキーム図作るの楽しいよね!下手だけど!
3 で、結局どうなのか
違法ではないんですよ。税務署や議会・自治体などによる「見張る目」もある。
でも、スキームとしては危うさがあるんですよね*2。この辺は社会福祉法人の闇問題というのがあって、まぁ色々改革しようという話はずっとあります。フローレンスの駒崎さんが既得権!と怒るのもこの辺りの問題のことも言ってるんだろうなーと愚考いたしますが、真っ当に公益のためにやってる社会福祉法人さんも多いですので!とだけは言っておきたいと思います。
4 その他、ブコメの疑問への色々
☆も多く集まっている、 id:nowa_s さんのいろんな疑問について。
「補助金支給が賃料前払い等に限定される規定の主旨」については、ブコメにて推測した通り「土地に補助金出しちゃうと、自作自演で廃業→転売されたりしたら困るから」じゃないかと思っております。まぁ「土地=資産」ではなく「事業=運営費用*3」への補助金である、という建て付けなんだろうと。
その他の疑問について、土地の元の所有者などは500円やそこらを出せば調べられますが、おかねもったいないので邪推をします。
国有地ってもとは何だったんだろう?疑問ですが、ありがちなのは官舎の跡地でしょうか。杉並あたりは社宅や官舎が多い地域です。官舎といっても巨大団地から高級官僚用の一軒家とか小さいものまであったりします。あとは一昔前は多かったようですが、相続税が払えなくて物納した不動産、滞納により国庫収納された不動産、なども国有財産になります。その辺りかなぁという気がしています。
売却情報は官報で周知されています(国有財産の売却情報 : 財務省)。任意で第三者に売却というケース、あるんだろうか…。国有財産法という法律があるようなので、そこで決まっているんでしょうね。読むのめんどいから読みませんが笑。過去には北海道開拓使官有物払下げ事件!*4みたいなこともあったわけですし、クローズ情報だけど議員さんになら優先的に売るよ、というのは無いんじゃないでしょうか。
それと、一般的に言われていることですが、地場産業の経営者や地主さんは「隣の土地が売りに出たら買え」というのは割と合言葉になっています。事業の拡張がしやすいからで珍しい考え方ではないです。googleMapで見ると、すでに経営されている幼稚園のすぐ裏手の土地ですし、売りに出てたら買いたい、保育園を作るのにちょうどいい!と考えるのは比較的自然なことだとも思います。
まぁ、そのように比較的自然な考えに基づくまっとうな保育園運営だろうが、合法な補助金利用だろうが、当該の杉並区議さんの思想、政治信条については、私にはあまり同意できるところがありませんが。
その他ブコメで、補助金が金持ちに還流されてんのかよぉ…というご意見がありました。私もその辺は、危ういかなー、とは思うものです。
前述したように、違法性はありませんが、登場人物のスキーム上の置き方への危うさと、登場人物のご発言にあまり信用しにくい非倫理性を感じます。誰だよ当選させたやつ、と言いたくなる感じで。
区議会、市議会レベルですと、どうしても興味を持ちにくい方もいらっしゃるかとは思いますが、「見張る目」を健全に保つためにも、地方選挙にも皆さんちゃんと行きましょうね。東京都あたりじゃ、投票率3割4割当たり前という感じですからね…。
おまけ
id:K-Ono さんのブコメ、「こういう抜け道探す仕事ってなんか儲かりそうな気もしないではない。」ですが、こういうの考えるのがいわゆるコンサルさんの収益源のひとつだったりします。税理士持ってる人が主に携わる感じでしょうか。みんな知ってる所謂大手のコンサルファームにも税理士の資格を持って個人向けのコンサルやってる人たちがいて、信託銀行や大手都市銀や証券会社やゼネコン・ハウスメーカーあたりと組んで、あーでもないこーでもないと、やったりしているんだと思われます。ハコ建ててローン組んでもらってBKやGCからキックバック貰ったりするんよ。
儲かるのかね。まぁ普通の会社員よりは給料はかなり多そうです。あとは独立して本書いたりDJやったり、ワイドショーでコメンテイターやったり…ええと。
おまけのおまけ
私には「税法の師匠」がいるんですが(不肖の弟子…)、その師匠から私は、お客様に何かをお勧めする時には、「儲かるかどうか、得するかどうか」よりも「危うさ」がないかどうかを一番慎重に確認しなさい、と教わりました。
こういう「なにかの方法」を使って儲けるしくみというのは、実は、そこそこの収入がある人じゃないと経費倒れになります。そして、そこそこの収入がある人、というのは多くが有名人であったり名士であったり社会的地位がある方だったりしますので、脱法性の高い節税や補助金スキームで得た「はした金」よりも、それがばれてしまった時の社会的信用の失墜の方がずっと打撃が大きいからです。
更に師匠からは、何かをお勧めする時には、相手のパーソナリティを見極めなさい、とも教えていただきました。どれだけクリーンに遅漏がないように作った「法」でも、どこかに必ず穴があくことがあります。特に商法や税法などは、社会の変化によってその意味合いがいつの間にか変化していくことがあるからです。グリーン投資減税なんて昔はなかった法律ですし、それを悪用した太陽光発電営業ビジネスは、新しいビジネスに対応した法律を上越して悪用したよねーという話だったりします。
なので、スキームを作る側がなるべくリスクを最小化しても、実際にそのスキームの上に乗っかった人間が「あくどい」場合は、悪さができちゃうんですよね。例えば上のスキーム図、当該の議員さんが「タダの一般人」なら危うさはかなり小さくなりますが、ひとたび議員さん当選してしまうと一気に色々危うくなる。だから私の師匠は、相手のパーソナリティを見て、それに見合ったものを勧めなさい、と言ったのだなぁと、思ったりしますです。
おまけも長かった。
失礼いたしました。