半導体・原発に傾注 売上高1.7兆円縮小
不正会計問題で業績不振が明らかになった東芝は18日、2016年度(17年3月期)の連結売上高を4兆9000億円などとする事業計画を発表した。家電や医療事業の縮小・撤退と人員削減などのリストラ策を進め、売上高は14年度の7割強にとどまる。経営資源を半導体やエネルギー事業に集中させ、16年度に3期ぶりの黒字転換を目指す。【岡大介、永井大介】
「新生東芝の確実な一歩を刻みたい」。室町正志社長は18日に東京都内で開いた記者会見で、経営再建に向けた意気込みを語った。
東芝は健康・医療部門の主要子会社をキヤノンに売却し、洗濯機などの白物家電を中国企業に売却する方針を公表済み。今後の人員削減規模を、従来計画から2980人積み増して1万3820人とするほか、17年4月に予定していた大学卒の新規採用を事務系・技術系ともに中止する。こうした人員削減や今後の自然減などで、14年度末に約21万7000人いた従業員は、2年間で約3万4000人減少する。
事業売却や人員削減で得た財源を、財務の立て直しや、成長分野と位置付ける事業への投資に振り向ける。再建の柱に掲げるのが半導体とエネルギー事業だ。半導体部門では、スマートフォンなどに使われる記憶媒体「NAND型フラッシュメモリー」に、18年度までの3年間で計約8600億円の設備投資を行う。投資を従来より4割程度増やし、競争力を高める。原発の新規建設ではインドや英国などで30年度までに45基の受注を目指す。
不採算事業の整理に伴い、16年度の売上高は14年度の6兆6558億円から1兆7000億円以上縮小するが、営業利益1200億円、最終(当期)利益400億円と3期ぶりの黒字回復を見込む。これで「攻めの態勢」(室町氏)に転じ、18年度の暫定目標として売上高5兆5000億円、営業利益2700億円、最終利益1000億円を掲げた。
しかし、半導体は市場価格が急変動しやすく、韓国企業などとの競争も激しい。市場では「直近の収益性は低下傾向にあり、体力の落ちた東芝は厳しい状況に陥る」(アナリスト)と懸念する声も出ている。原発も11年の東京電力福島第1原発事故以降、新規受注を獲得できておらず、再建計画が「絵に描いた餅」になるとの見方は根強い。
再建、道のり険しく
室町社長は18日の会見の冒頭、「失った信頼や価値は一朝一夕では取り返せない。できることを重ねて再生を図りたい」と強調した。しかし、信頼回復の道のりは厳しい。
東芝は同日、不正会計問題の再発防止策として、財務部門を決算の取りまとめ部門などとチェック部門に分離するとともに、広報・IR部を社長直轄にして機能を強化する4月の組織改正を発表した。しかし、同社の消極的な情報開示姿勢には、「もはや社風」(金融庁幹部)との批判が絶えない。
東芝は15日にも、10〜14年度に新たに7件の不正会計があったと発表した。不正会計の情報が事業部や財務部門にとどまり、広報などに伝わっていなかったためだ。組織改正で風通しの悪さが改まる保証はない。
一方、東芝は18日、米司法省や米証券取引委員会(SEC)からも不正会計問題の調査を受けている、と公表した。市場では、子会社である米原子力大手ウェスチングハウス(WH)の資産価値を適切に決算に反映しているか疑問視する向きが根強い。一連の問題が総括され、反転に向けて経営資源を総動員する段階にはいまだ至らない。
14年に米当局が米医療機器メーカーの不正会計を調査した際は、売上高の水増しで3000万ドル(約33億円)の課徴金を科され、当時の最高経営責任者(CEO)が懲役20年、最高財務責任者(CFO)は同10年の判決を受けた。東芝は日本の金融庁からも73億7350万円の課徴金を科された。今回の調査がどこまで発展するかは見通せないが、不正会計問題は依然として経営の足かせになっている。