一話から登場していた日向子（鎮西寿々歌）。
アルバイトで貯めたお金で念願のカメラを買い、毎日電車に乗って大阪環状線のひと駅ごとの写真を撮っていた。
きょうは最後の駅、京橋駅。この街で環状線完全制覇だ！

いつしか京橋南口あたりに戻ってきた日向子。アイスキャンディーをくわえ、カメラを構えるが、なぜかシャッターを押すことをためらい、ふと、ある看板に目が止まった。

【大阪大空襲、京橋駅、爆撃被災者、慰霊碑】

なんとなくその文字を読み、しおらしく仏様に手を合わせ、その場を離れようとしたとき、まともに何かとぶつかった。そこには、いかにも怪しげなジイちゃん（佐藤蛾次郎）が立っていた。

食べかけのアイスキャンディーをぶつけてしまったのが縁で、ちょっと不思議な雰囲気のジイちゃんと仲良くなった日向子は、初めての立ち飲み屋に連れて行ってもらったり、大阪城のお堀を一緒に散策したりする。ふだん家族にもしゃべらないような事もジイちゃんには不思議と話せる日向子。

寝屋川にかかる橋の上でジイちゃんは、70年前の終戦の前日、昭和20年8月14日に、京橋駅を襲ったB29の空爆に自分の妹が巻き込まれ死んでしまったこと、妹がなくなる前日に取り合いをしてアイスキャンディーを分けてあげなかった自分を今でも悔いていることを語りはじめる。