『フォールアウト4』正確な再現よりも、“ボストンをボストンたらしめている”自然さを凝縮した世界構築の方法に迫る【GDC 2016】

GDC3日目に、セッション“Fallout 4のモジュール式レベルデザイン”が行われた。その模様をお届けする。

●細かい部品を組み合わせてボストンらしさを再現

 2016年3月14日~18日(現地時間)、アメリカ・サンフランシスコ モスコーニセンターにて、ゲームクリエイターの技術交流を目的とした世界最大規模のセッション、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2016が開催。会期3日目に“'Fallout 4's' Modular Level Design(Fallout 4のモジュール式レベルデザイン)”が行われた。その模様をリポートする。

 本セションは、『フォールアウト4』でどのようにレベルデザインの構成部品をモジュール化(部品化)したかを取り上げた講演。“部品”を作るリードアーティストのNathan Purkeypile氏と、それを使って世界を構築するレベルデザイナーJoel Burgess氏のふたりがスピーカーとして登壇した(ふたりは12年間ともにベセスダで働いてきたとのこと)。


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 モジュール化というと、レゴブロックが連想することが多い。レゴブロックは小さな構成要素だけど、とても大きなモノを作るのに使え、それは時に製作者の予測を超えるくらいでもある。ゲーム開発の場合でも、キット(部品の集まり)を作った人が想像もしないような使いかたで、凄い物が作られたりすることがあるそうだ。


 しかし『フォールアウト3』になると、角度が90度以外の部品も出てきて、『Skyrim』となると左右非対称だったり、レベルデザイナーが自由に配置できる柱の部品など、自由なデザインが可能になってきた。そして『フォールアウト4』ではさらに自由度を高めていったと語った。

 続いて、キットを制作するにあたって非常に重要になるのが接地面積の単位。きちんと隙間なくハマるようにするには、256x256や 256x512など、きちんと決めておく必要があるという。ここで決めた単位が最終成果物の見た目に大きく影響するので、非常に重要であるそうだ。
 また、ピボットポイントを早期に固定することも非常に大事だ。どこに置くかは、数学的に破綻がなければどこでも構わないが、一度決めたら絶対に変えてはいけないとのこと。そうしないと、レベルデザイナーのそれまでの作業を台無しにしてしまうからだ。


 つぎに気を付けたのは、さまざまなキット(工場、住居、洞窟など)を作るときに、ドアのサイズを統一したことである。これの利点は、どんなドアでも使えるので多様性が出せること、そして“キャラクターが通れる最小サイズ”としての役割も果たすので、キャラクターアーティストにとっても早くに指標ができることになる。


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 そして、レイヤードインサート(部品を上書きするように重ねて配置される部品)について。たとえば洞窟の壁と地面のパーツをただ並べただけではとても人工的な風景になってしまう。そこに柱や突起のレイヤードインサートを配置して自然な感じに仕上げている。


 ここで、「色々と紹介してきましたが、私たちはこれが最善のワークフローだと思っていません」と語る。仮に現時点で最善だったとしても、新しいゲームを作ることになればまた新たなニーズが発生するかもしれないからだ。
 新しい方法を試す気持ちは忘れないようにしているとし、実験もいきあたりばったりではなく、きちんと考慮を重ねて行っていくことが大事だとのこと。目標を定め、試行錯誤をくり返せば、失敗はしてもかならず最後には前進するからだと言う。「明確な目標なくエディターを改造していくと、新しいモノはできるかもしれませんがそれが改良とは限りませんからね」と語った。


 『Skyrim』から『Fallout 4』へと開発が移り変わる際、一番顕著だったのは構造物の密度だったという。ボストンと大都市と自然に満ちたSkyrimの世界ではずいぶん構造物が多かったからだ。
 そこでまず、ボストンをゲーム内に再現するために必要となるキットを絞り込む作業を行うことにしたとのこと。ある場所を作るのにどういう部品が必要か、スケジュール的な余裕があるか、いつ各キットを完成させる必要があるか(レベルデザイナーが使えるようにできるか=開発を進められるようになるか)。これをしっかり決めるのは大変だった述べた。


 まず、5種類の複雑なキットを作るのと、10種類のそれほど複雑でないキットを作るのでは、後者のほうが時間がかかると言う。それは制作担当のアーティストが各部品の制作意図をしっかり理解するのにも時間が掛かるし、バグの生じる可能性も高くなるし、レベルデザイナーがそれらの活用方法に習熟するのにも時間がかかるからだ。

 開発側は、ゲームができるだけ早くプレイアブルな状態になることが望ましいと考えている。そこから開発のイテレーションがほんとうの意味で始まるからだ。そのため、キットの完成が遅くなるのは非常に良くないことであると断言した。

 いろいろな試行錯誤の結果、キットの数を減らして、結果より細かい部品をつくることに。たとえば、右側にドア、左が壁というパーツと、左右にドアのパーツを別々に作るのではなく、ドアのパーツと壁のパーツと床のパーツを作るアプローチである。


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 この“部品粒度の変更”は大したことがなさそうに見えるが、レベルデザイナーのワークフローにとっては非常に大きな変更だった。それは“自由度が高くなるかわりに時間がかかる”からだ。大きなパーツなら20個で作れるシーンが、粒度を細かくした場合123個に変更されていると言う。この時は、どうやって“粒度の細かい部品の利点”を残しながらこの問題を解決できるだろうかと考え、複数のパーツを組み合わせたセットを自分で作っておける“パッキング”という機能をエディタに用意したとのこと。
 この結果、レベルデザイナーは効率的にレベル設計を進めることができ、細かな点(窓枠など)を微調整することも可能になったそうだ。


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 ものすごく目立つ部品、汎用性の高い部品、彩り用の部品があるとき、誰もがものすごく目立つ部品が大事だと思いがちだし、アーティストも作りがいがあるから重要視しがちだが、ゲーム世界のほとんどは汎用性の高い部品で作られている。また、プロジェクトマネージャーの立場からすれば、ものすごく目立つ部品はコストが高いのに使用頻度は低いので、優先順位の低い部品ということになるそうだ。

 たとえば、サウガス製鉄所の最後のシーン。ここは、すべて汎用性の高い部品だけで作られている。つまり、ここで節約できた時間と労力を、ほかの部分に注げることができたということだ。


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●ボストンを作るのはいままでで一番の挑戦だった
 ボストンのダウンタウンを作るのはレベルデザイナーにとって一番の挑戦である。有名なストリートもあるし、象徴的な建物もある中、どれだけ正確に描くかと 悩んだ結果、なんと“正確さよりも自然さを重視する”ことに決めたとのこと。“ボストンをボストンたらしめている”要素を理解し、それを凝縮することで、『フォールアウト』のボストンを作ることにしたそうだ。

 具体的にどうしたのかというと、まずマップで海岸線を引き、ゲーム世界の広さに合わせた倍率を適用。海岸線に河川など、ボストンは水の町なので、これを引くことでマップの区分けと、作業量(マップの広さが確定するため)の確認が済んだ。
 つぎに名所ビルに注意を払うこと。これは予告トレイラーなんかでも、ユーザーさんが特定してくれたりしていたので、うまく行ったのではないかと述べていた。
 つぎの問題は道。ボストン道はごちゃごちゃしていてドライバーには本当に厳しい街だが、歩くにはとても素敵な街である。しかしゲームで再現するにあたっては、象徴的なストリートを残すことにしたとのことだ。


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 ここまで終わったところで、ストリートで区切られたエリアごとの雰囲気の違いも作り込めるようになった(ボストンはエリアごとにがらりと違う文化を持つとのこと)。そして、エリアごとに担当者を割当て、各人が責任をもってエリアの文化を作り込めるようにしたそうだ。

 ここまではプリプロダクションである。「さあ、ここからしっかり作っていくぞ」と思ったいたデザイナーたちであったが……うまく行かなかったそうだ。

 何故かと言うと、自分たちの持っていたノウハウが、全然通用しなかったからだと言う。『フォールアウト3』では使用されていないスペースをバッファとして使うことも可能だったが、『フォールアウト4』では使用されていないスペースがほぼなく、そこで調整することができず、少し調整を加えるとほかのエリアにも波及効果が出てしまったそうだ。

 それでも問題が起きたときキットの粒度を小さくしておいたおかげで何とかできたとのこと。レベルデザイナーとアーティストの両方が問題に対処できたからだった。いままではアーティストに任せるしかなかったが、『フォールアウト4』では最善の対処方法を生み出している、と言うことだ。

 また便利機能として、壁に窓を付けるときなど、クリックしたままスクロールすると窓をつぎつぎにプレビューできる機能を実装している。いままではメニューを開いて、選んで、結果を見て、検討するのが一連の流れだったのが、このプレビュー機能のおかげで、マウスホイール転がすだけで見比べができるのだ。こういった機能のおかげで、「いつも同じ景色」という状況を避けることができたそうだ。


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 なお先述した通り、これももちろん万能のワークフローではない。チームの、ゲームの優先順位は何か。それが一番大事だとBurgess氏とPurkeypile氏は強調した。
「どうか今日紹介した内容を、そのまま当てはめないでください。作っているゲームの目標とチームの掲げる野望が、プロセスを決めていくはずであり、逆ではないのですから」と語りかけ、セッションは終了した。