ブローカー周辺が関与 入国情報伝達か
【カイロ秋山信一】内戦下のシリアでジャーナリストの安田純平さん(42)が行方不明になった事件で、安田さんと共にシリアに入った密入国ブローカーの親族の知人が安田さんの拘束への関与を周囲に認めていたことが分かった。安田さんにブローカーを紹介したシリア人男性が明らかにした。ブローカー自身の関与は不明だが、安田さんは入国当日に拘束されたといい、ブローカー周辺から入国の情報が漏れていた可能性もある。
シリア人男性によると、安田さんは昨年6月下旬、トルコ南部アンタクヤからシリア北西部イドリブ県に入った。男性は「危険だからやめた方が良い」と助言したが、安田さんは「危険なのは分かっている。短期間だけイドリブ県に入って取材したい」と入国の仲介を依頼。男性が紹介したブローカーと共に密入国した。
だが、ブローカーは入国当日、男性に電話をかけ、「安田さんは(国際テロ組織アルカイダ系の)ヌスラ戦線に拘束された」と伝えた。
ブローカー自身は解放されたが、「犯行グループから『ヌスラ戦線の名前を出すな。トルコの治安機関に捕まったと言え』と要求された」と男性に説明したという。
男性はブローカーの説明に不信感を抱き、後日問い詰めると、拘束した犯行グループの一員であるシリア人の男がブローカーの親族の知人だったことが判明。男性がブローカーを通じて男に電話をかけると、男は関与を認めたという。
男が実際にヌスラ戦線の一員かどうかは不明だ。ヌスラ戦線関係者は取材に「安田さんを拘束している事実はない。幹部に確認した」と説明しており、末端の戦闘員が独自の判断で安田さんを拘束した可能性もある。
安田さんにブローカーを紹介した男性は、過激派組織「イスラム国」(IS)に殺害されたジャーナリストの後藤健二さん(当時47歳)の友人で、後藤さん殺害後に安田さんと知り合ったという。
安田さんは昨年6月下旬から消息を絶っているが、安田さんを名乗る男性の映像が16日公開され、何者かに拘束されていることが確認された。