【ソウル聯合ニュース】国際人権団体のアムネスティ・インターナショナル(本部・ロンドン)は9日、北朝鮮が携帯電話やインターネットなど情報通信への監視を強め、住民の権利を侵害しているとする報告書を発表した。
報告書は、2009年以降に北朝鮮を脱出して韓国や日本に住む17人と、法律家や社会学者ら専門家19人に対する聞き取り調査を基にまとめられた。
それによると、北朝鮮の携帯電話加入者は300万人を超えているが、北朝鮮の移動通信事業者は加入者が国際電話をできないようにしている。
このため、北朝鮮の外にいる家族や知人に連絡したい住民は中国との国境付近でブローカーに多額の手数料を払い、中国側の携帯電話通信網を使って通話せざるを得ない。
通話は主に外部から北朝鮮への送金がきちんと届いたかどうかを確認するものだが、ブローカーは最低でも送金額の3割の手数料を取るという。
通話できたとしても、盗聴の恐れがあるため暗号のような言葉でしか話せず、最近では監視の強化により15秒から1分ごとに一度電話を切らねばならない。
国際電話をしたことが摘発されれば反逆罪などに問われて労働教化所に送られるなど厳しく処罰される。これを逃れるには取り締まり要員に賄賂(わいろ)を渡すしかない。
ただ、こうしたリスクがあるにもかかわらず、密輸された中国製携帯電話の売買は闇市場で増えているという。
北朝鮮住民は国際電話だけでなく、インターネットの使用も制限されている。北朝鮮内の閉鎖型ネットワークにしか接続できず、世界とつながるワールド・ワイド・ウェブ(www)への接続は外国人や限られた少数の住民にしか許されない。
北朝鮮脱出住民(脱北者)らは、こうした通信制限は金正日(キム・ジョンイル)体制から金正恩(キム・ジョンウン)体制に移行するにつれて強まったと証言している。
アムネスティ東アジア地域事務所のニコラ・ベクラン所長は「金正恩体制に入って以降、北朝鮮は携帯電話による情報の流れが増えることを政権にとってのリスクと受け止めている」と説明。北朝鮮は、住民が外部の世界について、外部が北朝鮮の内部についてよく分からないようにしておくことにより、体制が維持されると考えていると指摘した。