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中国5カ年計画 実現のハードルは高い

 中国の全国人民代表大会(全人代=国会)で2020年までの第13次5カ年計画が決まった。経済成長率目標をこれまでの「7%」から「6・5%以上」に引き下げ、構造改革を進めて内需主導の経済発展を目指す方針を打ち出した。

     輸出、投資主導型の成長モデルは限界に達した。産業の高度化を進め、先進国入りを妨げる「中進国のわな」を突破する狙いだ。しかし、計画達成の難易度は高い。慎重に行方を見守りたい。

     計画のキーワードは「イノベーション」だ。技術革新で産業構造の高度化を進め、インターネット産業など新たな成長の基盤を作ると同時に、発展戦略や社会のあり方も刷新する狙いだという。高速鉄道などインフラ建設はなお大きな柱だが、科学技術力向上に力点が置かれた。

     高度成長下で取り残されてきた社会問題の解決に向けた施策も列挙された。農村の都市化を進め、都市住民に比べて恵まれない環境にある農民を新たな消費の担い手にすることや、微小粒子状物質「PM2・5」の増加に代表される環境汚染の改善、社会保障の充実などだ。

     処方箋は妥当なのだろうが、どれも実現は容易ではない。例えば、中国では農村と都市の戸籍が分かれ、社会保障の内容も全く異なる。平等に待遇するには、膨大な財政負担が必要になるため、改革には時間がかかる。採算の取れない「ゾンビ企業」の淘汰(とうた)など国有企業改革には失業者の受け皿となる雇用の創出が不可欠だ。全人代の期間中にも賃金未払いに抗議する炭鉱労働者のデモが起きたが、対策が不十分なら社会不安に結びつきかねない。

     「中進国のわな」を克服するには本来、政治改革が必要なはずだ。台湾や韓国では構造改革と民主化が並行して進んだ。習近平(しゅうきんぺい)政権は腐敗の撲滅や法治国家の建設、国家統治の現代化を掲げるが、政治改革には消極的だ。むしろ言論統制や社会活動の締め付けなどの動きが目立つ。

     成長の鈍化が「新常態」化する中、国民の声を吸い上げるシステムなしに負担を伴う改革を進めれば、不満が爆発することにはならないか。国際社会が中国経済の先行きに不安を持つ一因は、経済発展に見合った政治改革の動きが見られないことにあることを自覚すべきだ。

     中国共産党は21年に建党100年を迎える。5カ年計画の成功をうたい上げる場にしたいのが習政権の本音だろうが、難易度の高い改革の行方は予断を許さない。巨大化した中国経済の行方は世界経済にも大きな影響を与える。日本にとっても人ごとではない。協力の道を探るなど、冷静に対応していきたい。

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