大阪市東住吉区で95年、小学6年生の女児が焼死した火災で、殺人罪などで無期懲役が確定後、再審開始が決まっていた母親の青木恵子さん(52)と、内縁の夫だった朴龍晧(ぼくたつひろ)さん(50)について、大阪地検が有罪主張をしない考えを示した。

 4、5月に開かれる再審公判の後、逮捕から20年余りを経て近く無罪が確定する見通しだ。

 2人は保険金目的で自宅に放火したとされたが、大阪高裁が昨秋、車のガソリン漏れによる自然発火の可能性を認め、地裁の再審開始判断を支持した。

 検察はその後も有罪立証を模索したが、自然発火の可能性を消せず、断念したという。新証拠がない以上、裁判を長引かせる理由はない。2人の名誉回復を急ぐためにも、速やかに再審手続きに入るのは当然だ。

 一昨日の記者会見で、青木さんは「警察が正しく捜査していれば、こんなに長い期間、娘を殺した母親という立場に置かれることはなかった」と語った。

 我が子を失った悲しみに浸ることも許されず、自由を奪われた約20年はあまりに重い。

 捜査当局は自らの過ちを検証すべきだ。特に重要なのは、唯一の直接証拠だった自白がどうやって引き出されたかだ。

 大阪高裁は「取調官は度々大声を出し、被害者を救出しなかったことを責め、体調悪化がうかがえる中で自供書を作成させた」と捜査を批判した。

 こうした指摘への反論や自発的な総括は、検察当局からも警察からも聞かれない。初動段階から自白に頼り、予断をもって捜査した面はなかったのか。描いた構図に沿って証拠を都合よく解釈しなかったか。捜査当局には、検証した上で明らかにする責任がある。何より2人に説明し、謝罪すべきだ。

 裁判所の責任も、厳しく問われなければならない。

 火災が自然発火かどうかは、一審の段階から大きな争点だった。弁護側は火災の状況が供述内容と矛盾し、放火説は成り立たないと訴えてきた。だが地裁、高裁、最高裁はことごとく退け、捜査当局の自白調書を有罪の有力証拠と認定した。

 捜査の不備を見抜くべき立場にあるのが裁判所だ。供述と客観的な証拠の矛盾をどこまで吟味したのか。無実の訴えにどこまで真摯(しんし)に耳を傾けたのか。裁判所もまた自白偏重と言われても仕方ないのではないか。

 今回のような事態を防ぐにはどうすればいいか。再審公判を、警察、検察、そして裁判所が、自らの使命を謙虚に見つめ直す機会とするべきだ。