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JR西の思惑九州も視野に 中京圏と関係懸念も

小浜−京都駅ルート

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 北陸新幹線で未着工区間の敦賀以西ルート案が出そろい、与党検討委員会での絞り込みがこれから始まる。現時点で最有力とみられるのは小浜市から京都駅を経由して新大阪に至る「小浜−京都ルート」。運行するJR西日本が提案したことから沿線自治体など関係者の支持が集まるが、建設費の膨張や、北陸と中京圏との結び付きの低下を懸念する声も。JR西の思惑はどこに−。 (曽布川剛)

 「(人の)流動が多い京都を通り、大阪まで一気に開業させ、東海道新幹線の代替機能を果たす」。JR西の真鍋精志社長は、一九七三(昭和四十八)年に国の整備計画で定められた「若狭(小浜)ルート」をベースとした上で、京都−新大阪間で“第二の新幹線”を通す意義を強調する。

 念頭に置くのは、一日四千九百人が利用する京都−北陸間の需要取り込みだけでなく、現在新大阪止まりの山陽・九州新幹線の直通列車を新線で京都に乗り入れることだ。山陽・九州直通化による増収効果は二〇一一年度で百五十億円だったといい、京都までつながればさらなる上乗せが期待できる。

■在来線■

 大阪までの延伸時に並行在来線がJRから経営分離されることへの「皮算用」もありそうだ。経営効率の指標となる輸送密度(一日一キロ当たりの輸送量)は、小浜−京都ルートと並行する小浜線が一四年度で千七十八人。琵琶湖の西を通る「湖西ルート」と並行する湖西線は三万六千人強と三十倍以上だ。敦賀以西の主要駅の一日当たりの乗車人員は、小浜線が年々減少しているのに対し、湖西線は増加基調。

 鉄道ジャーナリストの梅原淳氏は「地方の鉄道は輸送密度千五百〜二千人が収支均衡の目安。小浜線は恐らく赤字。湖西線は関西への通勤で今後も収益が見込めるが、小浜線はできれば経営を続けたくないはずだ」と分析する。

 JR西は一四年度末で約一兆円の長期債務を抱え、今後は山陽新幹線の改修に千五百億円が必要になる。経営のスリム化が課題で、二月には輸送密度五十人の三江線(広島・島根県)で廃止を含めた地元協議を始めた。小浜−京都ルートを理由に小浜線を切り離せれば「渡りに船」だ。

■米原案■

 ただ、北陸との関係が深いのは関西だけではない。大阪との間で一日九千人とされる人の動きは、名古屋を中心とする中京圏との間でも三千八百人。小浜−京都ルートの場合、金沢−新大阪は乗り換えなしで一時間二十分強と便利になるのに対し、金沢−名古屋は敦賀、米原で二回乗り換えが必要な上、一時間四十五分かかる計算だ。

 中京圏にとってメリットが大きいのは、米原で東海道新幹線に接続する「米原ルート」だが、JR西、JR東海ともに「東海道のダイヤが過密で乗り入れは無理」と否定的だ。現在も東京−新大阪で一日三百五十本が走り、多い時は三分おき。ここに金沢−大阪で一日四十六本走る特急「サンダーバード」を上乗せするのは不可能というわけだ。さらに自動列車制御装置を正常に作動させるなど運行システムの改修が必要になることも米原ルートの難点とみられる。

 東海道新幹線の「こだま」を米原止まりにすれば可能とみる専門家もいるが、実現にはJR二社の綿密な利害調整が必要。今のところは「意見交換した」(JR西の真鍋社長)程度にとどまっているのが現状だ。

 

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