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summersunday’s blog

普段あんまり笑わない、そんな君の笑顔が見たくって

窓際族のポンコツさん(ノンフィクション悪口)

雑記

彼は突然やってきた。

 

親会社からやってきた。

38歳で子会社へ出向。ぼくたちはざわついた。これはノンフィクションでお送りする、窓際族のポンコツさん(仮)の物語。

 

彼がやってくる前

 

課長が珍しい話をした。今度、親会社から出向してくる人がいるらしい。どんな人かはわからないが、40歳手前くらいらしい。41歳の課長は、生え抜きの出世頭。若い頃から部のエースで、理系の大学卒。工業高校出の社員が多い中、大卒の社員は必然と出世していく。親会社への出向経験もある。申し分ないキャリアと誰もが認める仕事っぷりで出世レースの最前線を歩んでいる。そんな2課の課長。1課の課長は40代半ばで、どちらが次の部長になるかわからないが、間違いなく次の部長はどちらかになるであろうと誰もが予想している。そんなときだった、親会社から突然の出向者がくるらしい。課長は穏やかでは無かった。いきなり来たやつに仕事ができるものか、俺は早く部長になって給料を上げたい。そんな上昇思考の強い課長が、珍しく不安を口にした。

 

そしてやってきた

 

夏が終わり、少し涼しくなった頃だった。どんな人だろうと思ったが、見た目は普通だった。年齢の割に若い気もする。40歳手前のサラリーマンだった。部課長が面談をして、ベテラン社員の下について仕事を覚えていくことになった。課のメンバーは、どんな人なんだろう、と期待と不安の入り混じった形で日々を過ごした。

 

若手の先輩社員とオフレコ

秋口、ぼくは隣の部署と合同で若手の飲み会に参加した。駅前の居酒屋。20歳の2年目の男の子が予約をしてくれたお店だった。29歳最年長。入社歴は短いけれど、気を使う人がいない飲み会は楽しかった。8人くらいの会で、同じ部署で10年くらいになる人もいた。社内のカワイイ女の子の話、「検査の女の子を見すぎですよ」って気が付かれていた。まあそのへんは仕方ない。あと独身美女の話。楽しかった。勢いで2次会はキャバクラに行きたいと言いだした子もいた。シリアスな話もあった。高校を卒業してから、何年もいると会社のこともよく見えるらしい。親会社からくる人は、大概ダメだ、そんな話を聞いた。半信半疑だけど、正直そうであってほしい気持ちはあった。池井戸潤の小説にあるような、片道切符で出向してくる出世レース外れた人間であってほしかった。

 

歓迎会が開かれた

 

部で歓迎会が開かれた。僕と、出向者、あとケガをしていた社員の快気祝いを兼ねた飲み会だった。僕はやっぱりついでくらいの居場所が心地よい。最後に一言、意気込みをしゃべるタイミングがあった。なかなかの熱い言葉と、人となりがわかるスピーチだった。こんな長いこと喋るか、というくらいのスピーチだった。ぼくは一言で済ませておいた。よくしゃべる人だ、そんな印象を持った歓迎会での出来事だった。

 

しばらくは仕事っぷりも分からない、しかし挨拶がない

 

きてからしばらく、仕事っぷりも分からず、同じ部署なのだけれどほとんど誰とも会話しない人だった。40歳手前でなかなか自分から自分より年下の社員と積極的にコミュニケーションも取りづらいのも分かる。ぼくからも話しかけづらい気持ちもあった。しかしながら、挨拶が一切ないのだ。おはようございます、に対しては頭をコクリと下げるだけ。こんな下々の者どもに俺が挨拶をする必要もない、と思われているなら仕方がない。本当にそう思っているんじゃなかろうかと思う態度なのである。ちなみにぼくはパートのおばちゃん方に絶大の人気を誇っている。と思い込んでいるため、食堂ですれ違うと最高のさわやか笑顔で挨拶をする。「元気?」と聞かれれば、「めっちゃ元気っす」と答えるようにしている。そんなお姉さま方から悪い噂を聞く。やっぱり一切挨拶がないから嫌いだとのことだった。

 

それでもまだ、頭が良すぎて普通の会話ができない人だと思うようにした

 

挨拶はないけれど、まあ僕は仕事でからむことも少ないので腹を立てても仕方がない。課のメンバーの中には、「いやあいつクビだろ」「なんであんないい給料もらってんの」「どこも受け入れ先がなかったんだろうね」という声も聞かれるようになった。みんなあんまり好きじゃないのだろうと思う。僕だけじゃなく、みんなに挨拶をしないようだ。それでも僕は、頭が良すぎて普通の会話ができない人だと思うようにした。あの人はいつか世紀の大発見をして、会社にものすごい利益をもたらす人なのかもしれない、凡人には理解できないことを発想する人なのかもしれない、そう思うようにした。たまに居ますよね、IQが高すぎて、何しゃべってるかわからない人。頭のいい人どうしだったら通じる会話もあるらしい。

 

資格なし、ペーパードライバー

大企業でデスクワークをしていた彼は、現場の資格を持ち合わせていなかった。もちろん子会社にきたからには必要だ。現場できつい、汚い、危険な仕事もしなければならない。資格は講習を受ければ取得できるので、これからでいいと思う。15年ほどペーパードライバーだとのことだ。工場のある地域は東京や大阪とは違う。車は必須アイテムなのだ。僕は東京転勤で車を手放したが、いまの場所で車を購入した、中古車を。それくらい生活必需品な地域なのだ。どうやらペーパードライバーが長いと、運転は自信がなく、ペーパーを卒業するつもりも無いらしい。おいおい。彼の代わりに会社の社有車で移動をしたメンバーは、「俺、あいつの運転手っすか、冗談じゃねえよ」と嘆いていた。

 

そして、事件は起きた

 

 

 

関わらなければ腹を立てることはなかった。課のメンバーたちの憤慨する様子は何度か見たけれど、自分は言うほど腹を立てたりしなかった。いい給料をもらうのも、将来への投資なのだろうと思った。しかし事件が起きた。ぼくが主催でミーティングを開いた会だった。若手で集まって活動する会なのだ。意見を出し合って活動内容を決める会で、「責任者のいないところで議論していいのか」「標準に沿ったかたちで進めなくていいのか」と真っ当な意見なのだけど、それを言い出したら何も会議が進められないことを言い出した。ぼくはヒートアップしてしまい、意見を切り捨てて会議を進めてしまった。僕以上に怒ってくれたメンバーがいて、正直嬉しかった。会社員として、どちらが正しいか、そう問われたらあっちなのだろうけど。

 

取引先への態度もマズいらしい

聞いた話だが、取引先へ、「下請けどもよ働きたまえ」という態度を取るらしい。これじゃダメだ、作り直せと命令口調で言うらしい。大企業で働くと、こういう勘違いが起こるのかもしれない。名刺の効力。非常にマズい。外注先さんと上手くやるのは必須スキルだ。田舎の町工場で、悪い噂が立ってしまえば、一気に仕事がやりづらくなる。また外注先を探せばいい?そんな誰でも取引してくれる、誰もが取引したがるのは大企業だけだ。大企業でもしっかりとした対応をしてくれるのがほとんどだ。僕も自分よりウンと年上の企業の担当者から名刺を渡されて、丁寧にごあいさつをされたことがある。それ以上に丁寧にあいさつをするよう心掛けた。うちが仕事を出してるからお前らは飯が食えている?そんな態度で気持ち良く仕事ができるわけがない。おかげさま精神で仕事しようぜ。

 

窓際族のポンコツさんと呼ぶようにした

 

 

最前線で仕事をされるといろいろマズい気がする。総スカンになってしまいそうな勢いだ。せめていい給料をもらって、窓際でコーヒーを飲みながら、誰の邪魔もせずにパソコンを眺めて一日中インターネットサーフィンでもしていてほしい。

 

 

 

 

ポンコツ(XXLサイズTシャツ黒x文字白)