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2016年3月17日 (木)

1分単位の賃金

高校生がユニオンに入って交渉して1分単位で賃金を支払う労働協約を結んだというニュースが話題のようです。

http://www.asahi.com/articles/ASJ3H4FQJJ3HULFA00G.html (サンクスバイトの高校生、ブラック職場に対抗し労働協約)

これに対してやり過ぎだという批判をする人がいて、POSSEの人がそれに反批判をしたりという状況のようです。

労働法学的に言えば、時間外賃金は厳密に言えば1分単位で計算すべきであることは確かです。ただ、1分単位の賃金なんてなんと煩雑な、という反応もきわめてまともなのです。

問題は、そのまともな感覚が通るためには、1分単位の時間外労働などという変なものがやたらにはびこっていては通らないと言うことです。

何でこんな事になるかと言えば、そもそも所定時間の中で労働が始まり終わるという、他の諸国であれば当たり前のことが、日本ではアルバイトといえども全然当たり前でないからでしょう。

ヨーロッパに旅行したり住んでた人は皆経験していることですが、閉店時間が近づくと、まだ開店時間中であっても「もうすぐ閉店だよ、しっ、しっ」と追い払われます。

下手に客を入れてしまうと、その客の相手をしている間に閉店時間がきてしまい、1分単位の時間外労働を計算するなどという変なことになりかねません。

そういう馬鹿げたことにならないように、余裕を持って客を追い払うわけです。

普通の工場やオフィスでも同じこと、所定時間をはみ出さないように余裕を持って働いていれば、1分単位の時間外労働なんて変なものは考えなくて済みます。

日本社会で『余裕を持って』というのと、全然方向が違いますね。

そう、労働時間がちゃんと区切りのいい単位をはみ出さないようにしておけば、1分単位の時間外労働なんていう変なものを計算しなくて済むのです。

そして、そう、そういう『合理的』な行動が一番やりにくく、下手にやったら極悪非道として糾弾されてしまうのがこの日本社会なのであってみれば、所定時間の前に仕事を始め、所定時間の後で仕事を終えるのが礼儀作法だという社会文法がしみ通っているこの日本社会において、労働法の原則を素直に適用してしまえば、1分単位の時間外手当を細々と計算するというその額に比してやたらに煩雑な帰結がもたらされるのも宜なるかなというべきなのかもしれません。

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コメント

ヨーロッパに旅行したり住んでみたりしなくたって、余裕をもって仕事をしているお店がこの日本にだって全国至るところにあることを多くの人が知っているはずです。閉店5分前に行ったら商品にすでにカバーがかかっており、いらっしゃいませも言わず、値引きされた商品を買おうと思ったら睨みつけられる農業系販売店があります。サービスが悪いだのサービス精神がないだのと叩かれているようですが、このように徹底されていればたかが1分2分ぐらいの超過で文句言うなだの、1~2分のことなら景気よく30分の超過で扱ってくれなどの押し問答をしなくていいわけですね。閉店後のレジ締めの最中に客が来ても「いらっしゃいませ~」と言っているようではいかんということです。5分前に片付け終わってチャイムと同時にお疲れさまですが正しい労働のあり方なのですね。少なくとも一般職だのパートだのアルバイトだのという人たちは。「サービスの悪い」役所やそれに準じたような事業所を本来なら見習わなきゃいけないのに、今じゃ役所が民間の「よいサービス」を見習って、休憩中や営業時間の後にも来客対応しています。よろしくありません。時間外手当を支払わないと決めたのなら、時間外労働はしないので時間外の来店・来庁はお断りしますと言わなければなりません。

この事件で一番気になったのは、訴えた高校生の氏名が公表されていないことです。「あいつは理屈をこねる」「和を乱す」「学生は学問が本分だろうが」とか警戒されてしまう、つまりある種のセカンドレイプをこの子が今後ずっと味わいかねないことを見越して組合側が(またはマスコミが)伏せているのだと思うのですが、そういう気配りをしてあげないといけないぐらい日本の社会は陰湿なのだともいえそうです。

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