東電社員に報酬数百万円 請求方法コーチ
東京電力福島第1原発事故の影響で売り上げが減ったと偽り、東電から賠償金を詐取したとしてNPO法人の元幹部職員らが逮捕された事件に絡み、NPO側の不正に協力した疑いが持たれている東電社員の男が警視庁の任意の事情聴取に、請求方法などを教えた見返りにNPO側から数百万円の報酬を受け取ったことを認めたことが、捜査関係者への取材で分かった。一方で東電社員は詐欺に関与した認識は否定しており、警視庁は詰めの捜査を進めている。
事件を巡っては、警視庁組織犯罪対策3課が2014年6月、人材派遣業者による東電への約400万円の不正請求を手助けしたとされる男2人を逮捕。その後の捜査で、被災者を支援する目的で設立されたNPO法人「東日本大震災原子力災害等被災者支援協会」(東京都中野区)が不正請求を代行していた疑いが浮上し、元幹部の進藤一聡被告(44)=詐欺罪で公判中、村田博志被告(57)=2月15日に懲役9年の実刑判決を受け、東京高裁に控訴=が14年8月に逮捕された。
進藤被告は今年1月に東京地裁で行われた公判で、福島県内の土木建築業者やイベント運営会社の不正請求に関し、村田被告の友人とされる東電社員から賠償金の請求書類の作成方法などを教わったと証言。「情報料や指導力への見返り」として、詐取した金額の5%をNPO側からこの社員に支払っていたことを明かした。
捜査関係者によると、進藤被告が証言した東電社員は、賠償金申請を受け付ける東電の部署で勤務していたことが確認された。任意の聴取に、数百万円の受け取りを認めた上で「NPOが不正請求をしている認識はなかった」との趣旨の説明をしたという。
東京地裁は2月の村田被告に対する判決で、NPO側が土木建築業者ら3社の賠償金請求に絡み計約8900万円を東電から詐取したと認定した。社員が事情聴取を受けたことについて、東電広報室は「警察の捜査に関することなのでコメントは控える」と回答した。【宮崎隆、黒川晋史】