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難民のトルコ強制送還、EUが正式合意へ詰め

2016/3/17 21:12 (2016/3/18 0:56更新)
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 【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)は17日、ブリュッセルで首脳会議を開いた。18日までの日程で、8日に大筋合意したトルコ経由でギリシャへ渡る移民と難民はすべてトルコへ送り返す措置などで正式合意し、無秩序な難民・移民の流入に歯止めを掛けられるかが最大の焦点となる。ただ加盟国間でトルコとの連携強化などを巡ってなお温度差も大きく、議論は難航しそうだ。

 「合意は可能だが、率直に言って楽観よりも慎重さが勝っている」。EUのトゥスク大統領は17日、開幕に先立ち、トルコとの連携策についての交渉が難航していると示唆。加盟国に改めて歩み寄りを呼び掛けた。EUは18日にトルコのダウトオール首相との首脳会合を開き、正式合意の声明採択を目指す。

 トルコとの連携策は(1)新たな密入国者はすべてトルコへ強制送還する(2)強制送還でトルコがシリア難民1人を引き受けるごとに、EUがトルコ国内の難民キャンプからシリア難民1人をEU域内に受け入れる「難民交換」の導入――が柱だ。その見返りにトルコはシリア難民支援関連のEUからの資金援助の倍増や、EU域内を旅行するトルコ国民へのビザ免除時期の前倒し、EU加盟交渉の加速を求めている。

 「合意できれば、難民危機の解決に向けた本当のチャンスが初めて訪れる」。メルケル独首相は16日の議会演説で、首脳会議での正式合意に期待を込めた。13日の独地方選では“反難民”を訴えた新興右派が躍進している。難民問題は現政権にとって17年の総選挙に向けた最優先課題だ。

 ただトルコとの連携拡大に慎重な加盟国もなお多い。その代表がキプロスだ。「トルコがキプロスを(国家と)承認しない限り、同意するつもりはない」(アナスタシアディス大統領)。トルコによる軍事介入の結果、北キプロスが独立を宣言し、74年から分断状態が続く。北キプロスの後ろ盾であるトルコはキプロスを承認しておらず、キプロスはトルコのEU加盟に反対してきた。

 ビザ免除を巡っても、オランド仏大統領は「いかなる妥協もしない」と慎重論をみせる。正式合意に向けてEU加盟国の慎重論にどう折り合いをつけるかが課題となる。

 難民をギリシャからトルコへ大量送還することの適法性への疑問の声も根強い。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は「難民の大量送還は国際法に反する」と懸念を表明する。こうした国際的な批判にEUとしてどう答えるかも焦点となる。

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