渡辺哲哉
2016年3月18日02時11分
フリージャーナリストの安田純平さんを拘束しているとみられる「ヌスラ戦線」は多くの誘拐事件を起こしてきた。人質を残酷な方法で殺す過激派組織「イスラム国」(IS)と違い、身代金と引き換えに解放することもあるとされる。しかし、日本政府は支払いに応じない考えで、救出への道筋は不透明だ。
日本政府は動画の男性について安田純平さんとほぼ断定し、情報の収集や映像の分析を急いでいる。
安倍晋三首相は17日朝、首相官邸で岸田文雄外相に情報収集などの対応を指示した。岸田氏はその後の参院外交防衛委員会で「様々な情報網を駆使して全力で対応に努めている」と述べた。菅義偉官房長官は同日の記者会見で、昨夏に安田さんが行方不明になったとの情報を得た後、首相が対応を指示していたことを明らかにした。
警察庁の金高雅仁長官は17日の記者会見で「映像の内容を分析中だ。外務省など関係機関と連携し、情報収集に努めている」と述べ、「対応については事案の性質上、詳細な答えは控える」と語った。
政府は官邸対策室を設け、西村泰彦内閣危機管理監が情報を集約。昨年12月に省庁横断で立ち上げた「国際テロ情報収集ユニット」の職員を中東に派遣し、情報を集めてきた。安田さんの居場所については「シリア国内のシリア政府の権限が及ばない地域」(政府高官)と分析している。
公開された動画の内容については、安田さんとみられる男性の発言にはヌスラ戦線側の具体的な要求が含まれていなかったことから、政府関係者は「これから交渉を始めるという意図ではないか」と話している。ただ、官邸幹部は「向こうの要求に乗るようなことはない」と語り、テロ組織による身代金の要求などには応じない考えを強調した。(渡辺哲哉)
残り:303文字/全文:1030文字
おすすめコンテンツ
※Twitterのサービスが混み合っている時など、ツイートが表示されない場合もあります。
朝日新聞国際報道部
PR比べてお得!