サンパウロ=田村剛
2016年3月17日16時51分
支持率低下に苦しむブラジルのルセフ大統領は16日、大規模汚職への関与が疑われているルラ前大統領(70)を官房長官に起用すると発表した。ルラ氏は今月、捜査当局による家宅捜索や事情聴取を受けたばかり。今回の「奇策」についてルセフ氏は、2期8年にわたって大統領を務めた政治手腕を買ったと説明しているが、閣僚の地位に就くことで捜査をかわす狙いがあるとの見方が強まっている。
地元報道によると、ルセフ氏は今月初旬からルラ氏に入閣を打診。ルラ氏は当初は固辞したが、15~16日にブラジリアでルセフ氏と直接協議し、就任が決まったという。官房長官は大統領に次ぐ重要ポストだ。
ルセフ氏は16日の会見で「私とルラ氏の間には、強固な関係がある。ルラ氏の存在は政府やブラジルを助ける力になる」と述べた。ルラ氏は与党・労働党の創設者で、かつてルセフ氏を後継に指名した。政界に強い影響力を持つルラ氏を内閣に迎えることで、政権の求心力を高める狙いもあるとみられる。
だがルラ氏は、国営石油会社ペトロブラスと与党政治家を巡る大規模な汚職に関与したとして、今月初旬に連邦警察などによる強制捜査を受けた。
ブラジルでは、閣僚は最高裁によってしか裁かれないとの特権規定がある。地元メディアは、入閣によって、捜査がこれまでルラ氏を担当してきた検察や管轄裁判所の手を離れると指摘。入閣を「汚職事件によるルラ氏の起訴や身柄拘束を避けるため」と批判的に報じている。
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朝日新聞国際報道部
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