トップ > 中日スポーツ > スポーツ > 首都スポ > 記事

ここから本文

【首都スポ】

[バレーボール]ミドルブロッカーで日本代表入り狙うNECの島村

2016年3月17日 紙面から

ネットより上に立ちはだかり笑顔全開の島村=川崎市の体育館で(福永忠敬撮影)

写真

 2012年ロンドン五輪で28年ぶりに銅メダルを獲得した日本女子バレーボール。5月14日に東京体育館で開幕する、世界最終予選兼アジア予選で、リオデジャネイロ五輪の出場権獲得を目指す。日本にとって長年の課題がミドルブロッカーの攻撃力なのだが、「攻撃だけは絶対に負けない自信がある」と胸を張るのが川崎市立橘高出身の島村春世(NEC)。昨夏のワールドカップ(W杯)にも出場、世界の高さに屈しないスピードや多彩な技を見せた24歳が、自身初めての五輪出場へ向けた戦いに挑む。 (スポーツライター・田中夕子)

 レシーブができないなら、おまえはミドルだ。高校のころ、顧問の先生のひと言で、島村はウイングスパイカーからミドルブロッカーに転向した。今となっては、ミドルブロッカーの中ではレシーブもできるし、バックアタックも打てる器用な存在なのだが、何がきっかけになるかは分からない。

 「主役になれるポジションではないけれど、ミドルでよかった、って思うんです。生まれた時から、なるべくしてなったような気がします」

 腰越漁港に程近い鎌倉市の出身で、2人の姉と弟、妹。5人姉弟の真ん中で、祖父母とともに暮らす9人家族の大所帯。

 「ハチャメチャですよ(笑)。30分ごとにチャンネル争いをして、ご飯の時は大皿の料理をみんなで奪い合う。寝る場所も月に一度、じゃんけんで決めていました」

 真ん中の宿命か、姉たちからは『これやっておいてね』と言われ、弟と妹からは『遊ぼうよ』とねだられる。上と下のつなぎ役というわけではないが、その場の状況に応じて、どちらの要求にも応えなければならない。

 だがそれこそが、生まれながらのミドルブロッカー気質なのだと言う。

 「ブロッカーと名前についている以上、ブロックは大事な仕事です。でもそれ以上に、ミドルにとって一番の役割は、周りを生かすこと。他の選手の調子が悪い時には自分も攻撃して決めるし、おとりで攻撃に入って、サポートに徹することもある。姉や弟の間で行動してきたことが、すごく生かされるポジションなんですよ(笑)」

 ウイングスパイカーとしてたたき込まれた攻撃力は、ミドルブロッカーへ転向後も大きな武器になった。身長が1メートル80を超えた中学3年時には神奈川選抜で全国大会に出場し、高校は川崎市立橘へ進学。スポーツが盛んで全国高校総体(インターハイ)など全国大会の常連だが、同学年のレギュラー選手が少なく「伝統を途絶えさせてはいけないと必死だったので、日本一など考える余裕もなかった」と笑う。

 卒業後は高校から歩いて5分ほどの場所を本拠地とするNECへ。チームメートにはアテネ、北京五輪に出場した杉山祥子がおり、Vリーグの連続試合出場の日本記録を持つ杉山の熟練の技は、島村にとってこれ以上ないお手本だった。

 セッターに近い位置からの速攻に加え、ライトへ走り込むスパイクなど技の数とともに試合出場の機会も増え、昨季はVプレミアリーグで10シーズンぶりとなる優勝を飾った。

 大エースと言える選手がいない中、攻撃の中心としての活躍を評価され、昨夏のW杯に出場。自身は「初めてづくしで、毎日必死だった」と振り返るが、高さやパワーで上回る相手に対してどう攻めるべきか。重ねた経験は、得難い財産になった。

 その直後に開幕したVプレミアリーグでは連覇を目指すNECの主将として全試合出場を果たすも最終成績は4位。島村にとってはやや悔いが残る結果となったリーグ閉幕から2日後の3月14日、今季の女子バレー全日本代表候補28人が発表された。5月14日から開催される五輪最終予選や、リオ五輪に出場するためには、この中で自分のポジションを勝ち取らなければならない。

 ミドルブロッカーは7人。その中に島村の名前もあった。

 「荒木(絵里香=上尾)さんや、(大竹)里歩(デンソー)のように、ブロックのいい、まさしく『ミドルブロッカー』という選手がたくさんいて、みんなそれぞれの持ち味がある。選ばれるかどうか、ぎりぎりのところに自分はいるから、何とか結果を残さなきゃ、という思いは、今まで以上に強くなりました」

 バレーを始めたころは、日本代表も、五輪も考えたこともないぐらい遠くにあるものだったが、今は、手を伸ばせば届く場所にある。

 「リオはもちろんですが、自国開催の東京も目指せるものなら目指したい。このチャンスを、逃したくないです」

 攻撃力と、5人姉弟で培ったバランス。ミドルブロッカーとして無比の素質を武器に、世界へと羽ばたいていく。

<島村春世(しまむら・はるよ)> 1992(平成4)年3月4日生まれの24歳。神奈川県鎌倉市出身。182センチ、73キロ。小学4年から母の影響でバレーを始める。橘高在学時も全国大会出場を重ね、2010年4月にNECへ入社。13年に日本代表へ初選出され、14年アジア大会(仁川)、15年にはW杯にも出場した。ニックネームは「ジョン」。高校の先輩から「犬みたいな顔だから」と言われたことがきっかけで「何となくそれからずっとジョン(笑)」。

<ミドルブロッカー> 6人制でブロックを主な役目とする選手。以前はセンタープレーヤーと呼ばれた。攻撃では速攻(クイック)、ブロード(セッター後方への流れるトスを打つ)攻撃など低めのトスを打つことが多く、時間差攻撃ではおとり役になる。ポジションの性格上、高身長の選手が任される傾向にある。また、速攻に備え、サーブレシーブは受ける役から外れる場合が多い。後衛では度々リベロ(守備専門選手)と入れ替わる。

  ◇

 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」面がトーチュウに誕生。連日、最終面で展開中

 

この記事を印刷する

PR情報

閉じる
中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ