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ミャンマー 民主国家として再生を

 ミャンマーで54年ぶりの文民大統領が誕生した。民主化運動指導者であるアウンサンスーチー氏の側近だ。今月末に発足予定の新政権は民主化勢力が中心となり、半世紀にわたって国軍が支配した体制から脱する。民主国家としての再生につながることを期待したい。

     与党「国民民主連盟」(NLD)党首のスーチー氏は「外国籍の家族がいる人物は正副大統領になる資格がない」という憲法規定に阻まれて大統領になれない。このため、スーチー氏の信頼があついティンチョー氏が便宜的に大統領に選出された。

     スーチー氏は「大統領の上に立つ」と公言し、事実上政権を率いる考えを示している。民主化運動を率いてきたスーチー氏が政治指導者となることに国民の期待は高い。

     しかし、やむを得ないとはいえ、大統領がトップとしての権限を持たない変則的な政権となることには危惧を抱かざるを得ない。スーチー氏がどのような形で政権運営に携わるのか、国際社会に対して明確に説明していく必要がある。

     長年にわたって軍が権力を独占してきたため、軍出身者以外に政治経験を持つ人材が極端に乏しいことも不安材料だ。ティンチョー氏も政治経験がほとんどない。

     安定した政権運営のためには軍の協力が不可欠となる。ところが、独裁的な形で権力を振るってきた軍と、軍事政権下で抑圧されてきたNLDの間では相互不信が根深い。関係修復が重要だ。

     2011年に軍事政権から民政に移管して以来、テインセイン大統領の下で改革が進められた。言論や報道の自由が進み、経済開放で外国から投資が増大するなど効果が出ている。とはいえ、軍事政権下で閉鎖的な体制を取ってきたため、インフラ整備や産業育成の遅れは深刻だ。

     国内では軍人を中心とする利権の構造が温存され、汚職体質が根強く残っている。国民の間には大きな貧富の格差が存在する。西部ラカイン州で続く仏教徒とイスラム教徒の対立など宗教や民族が絡む問題も起きている。新政権が取り組むべき課題は多い。

     ノーベル平和賞も受賞したスーチー氏は欧米諸国と良好な関係にあり、事実上のスーチー政権の誕生を歓迎するムードが強い。その一方、中国など政治体制が異なる国とどうつきあっていくのかも注目される。

     日本政府は民政移管以降の改革路線を評価し、円借款を再開するなどして支援している。日本企業の進出や投資も進んでいる。日本はインフラ整備や人材育成など幅広い分野で支援を強化し、新政権下での国づくりを後押ししたい。

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