僕は高校三年生になっていた、あいかわらず彼女ができないどころか、
女の子と会話する事も出来なかった。
僕の友達も、やっぱり似たような奴ばかりで。彼女がいるヤツは一人もいなかった。
僕はそんな友達と高校生活を過ごしていて、ある意味、安心しきっていた。
こいつらも彼女いねーし、俺も彼女できなくてもいいやーと思っていた。
しかしある日、友達のK君とS君の二人が、こう言ってきたのだ。
「俺ら昨日、合コンしてきただぜー!」
なに!?
合コンだと!?
聞けばK君とS君は、女子高生をナンパし、カラオケに行ったと言うのだ!
自分が通っている高校の女子ではなく他校の二人組の女子をナンパして成功したと自慢げに話していた。
最初は作り話かと思ったが、よく聞いてみると本当の事のようだった。
思えばK君もS君も彼女が欲しいとずっと言っていた、
僕と同じように、なかなかクラスの女の子と仲良くなるきっかけがなかったのだ。
だからついに他校の女子をナンパするという強硬手段に打って出たのだ。
なぜ他校の女子かというと、自分の通っている学校の女子をナンパしてしまうと、
失敗した時に、変な噂が流れて居づらくなるからだと言う。
たしかにその通りだ。
街にいる女子に声をかけて、失敗しても、もう二度と会う事はない。
しかし自分が通っている高校の女生徒に声をかけて失敗したら、その子と同じ学校に行かなければならないのだ、これは居たたまれない。
自意識過剰で小心者は、失敗した時のことを強烈に思い浮かべてしまう。 そして自分には無理だと決めつけて行動できなくなってしまうのだ。
でも他校の女子ならいくらでも失敗できるじゃないか!
もし僕が、クラスの女の子に手当たりしだいナンパなんかしたら、エロゲーが趣味のくせにナンパしてくるキモイやつ、というレッテルを貼られてしまう。
しかし、二度と会う事がない他校の女子なら、そんな心配はない。
卑怯者の思考回路だな。
だか、これも突破口の一つだ!
ナンパに成功したK君とS君の話を聞きながら、僕は羨ましいと思った。
それと同時に嫉妬もした。
僕と同じように女の子とまともに会話すら出来なかったヤツが、女の子をナンパしカラオケにまで行ったなんて、衝撃的なことだった。
「俺もナンパする!!」
僕はK君とS君に突発的に宣言していた。
K君「よーしやろうぜ!」
S君「やりまくりだぜ!」
僕を駆り立てたのは、まさに嫉妬と羨望というエネルギーだった。
その日の放課後、僕はさっそくK君、S君と一緒に街に繰り出しナンパをする事にした。
ジャンケンで負けた僕が、最初に声をかける事になった。
ショッピングセンター内を物色し二人組の女の子を発見した。
僕はK君とS君に背中を押されて突撃した。
「あ、あの〜、かわいいね・・・」
女の子は一瞬怪訝な顔をして、そのまま去っていった。
僕は状況を理解できず、しばし呆然としていた、
それと同時に僕の内的世界で、ギィィィと何かの扉が開いていくのを感じていた。
リアルな女の子の反応は、二次元美少女のそれとは明らかに違う。
エロゲーという魔境に入り浸っていた僕にとって、
彼女たちの反応は、現実世界への扉を開くための鍵だったのだ。
こうして僕は高校三年生の夏、ナンパ師としてデビューする事になった。
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