・世界を変えるデジタルトレンド「AI」「FinTech」「ドローン」「自動運転」「IoT」コーナーを新設しました。

AI

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

圧勝「囲碁AI」が露呈した人工知能の弱点

(1/2ページ)
2016/3/17 6:30
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
保存
印刷
リプリント
共有

ITpro

 米グーグルの研究部門であるGoogle DeepMindが開発した囲碁AI(人工知能)「AlphaGo(アルファ碁)」と、韓国のプロ棋士イ・セドル氏が2016年3月9日~15日に韓国で相まみえた五番勝負は、イ・セドル氏が第四局で一矢を報いたものの、4勝1敗でAlphaGoの圧勝に終わった。この五番勝負は、“第三次AIブーム”を牽引するディープラーニング(深層学習:多層のニューラルネットによる機械学習)のデモンストレーションという枠を超え、その強みと弱点、ビジネス応用の方向性を浮き彫りにした。

グーグルの人工知能「アルファ碁」とトップ級棋士の囲碁対決。第4局は人間が勝利した(2016年3月13日、ソウル)=AP
画像の拡大

グーグルの人工知能「アルファ碁」とトップ級棋士の囲碁対決。第4局は人間が勝利した(2016年3月13日、ソウル)=AP

 今回の五番勝負が改めて示したディープラーニングの強みは、このAI技術が用途によらず、極めて汎用的に使えるという点だ。

 AlphaGoのソフトウエアには、囲碁のルールすら組み込まれていない。過去の棋譜をニューラルネットに入力する「教師あり学習」と、勝利を報酬に囲碁AI同士を対局させて鍛える「強化学習(教師なし学習)」だけで、世界最強と称されるプロ棋士を破るまでに成長させた。

 AlphaGoは2015年10月の時点で、3000万局もの自己対局をこなしたという。地球上にプロ棋士が1000人いるとして、毎日対局したとしても1年当たり約20万局。少なくとも、未知の定石や打ち筋といったイノベーションを生むスピードで言えば、コンピューターは囲碁の領域で「シンギュラリティ(技術的特異点)」に達した、と言わざるを得ない。今後は、コンピューターとプロ棋士の組み合わせが生み出すイノベーションへと焦点が移るだろう。

 プレーヤーが全情報を把握できる「完全情報ゲーム」でなくとも、ディープラーニングは適切な「入力データ」と「教師データ」「報酬データ」を用意できれば威力を発揮できる。これまで人間が担っていた「認識」「検知」に関わる領域、例えば画像認識、音声認識、顔認証から、防犯カメラに映った人間の振るまい解析、サイバー攻撃の予兆検知、医療用画像の解析などで、人間を超える精度を実現しつつある。

■ディープラーニングの「弱み」とは

 今回の五番勝負は、ディープラーニングの強みに加えて、ディープラーニングを実社会に応用する上での二つの弱点を露呈させた。

 一つは、AIが明らかに誤りと思える判断を出力した場合にも、その原因の解析が極めて困難であることだ。イ・セドル氏が勝利した第四局では、AlphaGoは明らかな悪手を繰り返した後に敗北したが、その原因は当のDeepMindのメンバーにも分からなかった。通常のプログラムであればコードを追跡してデバッグできるが、ディープラーニングには人間が読める論理コードはなく、あるのは各ニューラルネットの接続の強さを表すパラメーターだけ。アルゴリズムは人間にとってブラックボックスになっている。

 もう一つは、高度に訓練されたAIは、例え結果的に正しい判断であっても、人間にはまったく理解できない行動を取る場合があることだ。特にAlphaGoが勝利した第二局では、プロ棋士の解説者は「なぜAlphaGoの奇妙な打ち手が勝利につながったのか、理解できない」といった言葉を繰り返した。

  • 前へ
  • 1ページ
  • 2ページ
  • 次へ
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
保存
印刷
リプリント
共有

電子版トップテクノロジートップ

関連キーワード

AlphaGo、Google、コンピューター、囲碁AI、DeepMind、ディープラーニング、IBM

日経BPの関連記事

【PR】

【PR】

AI 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

グーグルの人工知能「アルファ碁」とトップ級棋士の囲碁対決。第4局は人間が勝利した(2016年3月13日、ソウル)=AP

AP

圧勝「囲碁AI」が露呈した人工知能の弱点

 米グーグルの研究部門であるGoogle DeepMindが開発した囲碁AI(人工知能)「AlphaGo(アルファ碁)」と、韓国のプロ棋士イ・セドル氏が2016年3月9日~15日に韓国で相まみえた五番…続き (3/17)

米グーグルの囲碁AI、李九段に最終局も勝利(15日)=AP

AP

トップ棋士に4勝1敗 囲碁AIが人間に教えた未来 [有料会員限定]

 米グーグルが開発した囲碁の人工知能(AI)「アルファ碁」が世界トップ級のプロ棋士である韓国の李世●(石の下に乙、イ・セドル)九段との5局勝負で4勝1敗と圧勝し、AIの歴史に新たな金字塔を打ち立てた。…続き (3/15)

アームを使ってペットボトルを選んでつかむ作業をしている様子

急激な需要変動にも対応 日立、AIで物流作業効率化 [有料会員限定]

 製造業の現場でAI(人工知能)の活用が始まった。トヨタ自動車やファナックなど日本を代表するメーカーが製品にAIを搭載する動きを相次いで本格化させている。自ら学習を重ねて知能を獲得するAIは、製品の性…続き (3/15)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

日経産業新聞 ピックアップ2016年3月17日付

2016年3月17日付

・バンダイナムコ、名作ゲームの版権開放拡大
・関西大、心機能を電波で簡単計測
・米VB、バスや電車の運行最適化へ分析サービス
・デンソー、省エネシステム導入 エネ消費2%削減
・大阪有機化学工業、3倍伸びるアクリル樹脂開発…続き

日経産業新聞 購読のお申し込み
日経産業新聞 mobile

[PR]

関連媒体サイト