「有罪立証によって、無駄な時間が割かれることが避けられてうれしい」。16日正午前、朴龍晧さん（50）の事前協議後に大阪市内で記者会見した弁護人の乗井弥生弁護士らは笑顔で話した。
朴さんは弁護側を通じ、「びっくりした。検察が率直に事実を受け止めて、適切な対応をしてくれたものと思っている」などとコメントした。
２人の再審開始を認めた昨年10月の大阪高裁決定は、火元とされる車庫に止まっていた車は満タンに給油された状態で、直前まで夏場の市内を走行していたことから「燃料タンクなどの温度が上昇してタンク内圧が上がり、給油口からガソリンが漏出しやすい条件下にあった」と指摘。「自然発火の可能性が否定できない」と再審開始を認めた。
検察側が再審で有罪立証するには出火原因が放火以外にあり得ないと言えるかがポイントだった。大阪高裁の再審請求即時抗告審でも検察側は再現実験の結果から配管の故障で車から漏れるガソリンの量では火災は起きないとしたが、高裁決定は「実験の再現性が不十分」としていた。
検察側は今年１月に始まった３者協議で立証方針をいったん留保する一方、弁護側が保管していた車庫の車の再検分を要求。弁護側は弁護人が立ち会い、車底部の配管などに限って調べるとの条件で認めた。
検察側はこうした検分に加え、確定審や再審請求審での記録なども精査した結果、再審で自然発火の可能性を打ち消すことは不可能と判断。有罪立証を断念する方針を決めたとみられる。