賃上げのペースが遅いのはなぜか――。政府が16日開いた国際金融経済分析会合で、日銀の黒田東彦総裁がジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授にこんな問いを投げかけた。総裁は15日の記者会見で「賃金が上昇していく環境は十分整っている」と語っていたが、進まぬ賃上げに焦りも感じつつあるようだ。
「不可思議なことがある」。黒田総裁は質問をこう切り出した。アベノミクスのもとで企業収益は改善し労働市場も引き締まっている。「急速な賃上げが起きるのが普通だと思われるが、実際の賃上げのペースは緩い」と疑問を呈した。
スティグリッツ教授は米国では職探しを諦めた人が失業者に分類されないなど「失業率が労働市場を正確に表していない」と指摘。「失業率とインフレ率の関係が瓦解してきている」と語った。