テリオンの小説入門
テリオンの小説入門 起承転結用教材「鬼斬り師大神命の退魔録」結
テリオンの小説入門 起承転結用教材「鬼斬り師大神命の退魔録」結
ヒギャァァァ!!!!
鞘走りの音の後に耳を劈くような悲鳴を上げたのは鬼の方だった。
萌は恐る恐る目を開け、目の前の光景を見て驚いた。
萌の目に映るのは、目をえぐられた大神の死体ではなく、腕を押さえてのたうちまわる鬼。大神の右腕には一振りの無骨な野太刀が握り締められていた。
「さあ、【悪喰】食事の時間だぜ!」
大神は刀に向かって話しかける。
そして鬼は起き上がり臨戦態勢を取る。
萌はここで違和感を感じた。恐らくあの鬼の腕は大神の刀に【斬られた】であろう。
だが、斬られた鬼の傷口はまるで巨大な獣に喰い千切られた様な痕になっていた。
「萌っち悪りぃが耳と目塞いでくれる?」
萌は混乱しながらも言われたように耳を塞ぎ目を閉じる。それを確認すれば大神は刀身の長い野太刀を薩摩示現流と言う流派のトンボの構えに近い型を取り、腰を低く落とす。
「鬼斬師大神命……鬼さん、こちらっ!」
掛け声と供に大神は走りだす。
鬼もまた無事な方の手で大神の目を抉り取ろうと腕を伸ばす。
大神は飛び上がり、更に大きく横振りした鬼の腕を足場に、更に跳躍する。
「さあ、好きなだけ食らえ、悪喰!!」
大神がそう叫ぶと、野太刀は禍々しい気を放ち、刀身が獣の口のように変化する。
「チェストオオオオオオ!!!」
掛け声と共に大神が悪喰と呼んだ野太刀を振り下ろすと、獣が獲物に頭からかぶりつくように刀の口が、鬼の上半身を覆う。
グチュ……ジュル……グシャァ……と生々しい音を立てて鬼が刀に喰われていく。
最後はそこに鬼がいた痕跡すら残っていなかった。
「毎度の事ながらどちらかと言うと悪役の技だよな、これ」
鬼を喰らった刀を見てぼそりと大神は感想を述べた。
「お……大神さん、今のは一体……あの鬼みたいなのはなんですか!? 大神さんって一体何者なんですか!!」
「ん~話長くなるけど聞く?」
こうして某市で起こった連続殺人事件は22件の被害者を出しながらも解決した。
表向きは犯人不明の迷宮事件として。
いずれカゴメ様の噂も廃れていくだろう。
つづく。