主人公に自己紹介させるな


 はい、今回は主人公に自己紹介させるなです。


 昨今のネット小説などでは冒頭で主人公が自己紹介していますが……誰に向けてですか?

 一人称型作品に特に多いのですが……これリアルで例えるなら、何もない空間に向かって「俺の名は山田! ごく普通の高校生だ」って言ってるようなものです。精神科をご紹介したくなる人物に見えません?


 テレビとかで冒頭に自己紹介しているよねという人もいますがあれは小説で例えるなら第三者視点で視聴者へむけての紹介です。


 どうしても自己紹介したいなら新入社員や新入生として物語の中と読者2つ同時に向けて紹介するような形にしましょう。


 この自己紹介、実は小説でのNG行為が多いんです。


 まず「ごく普通の高校生」と紹介しますが……では、そのキャラクターに質問です、【貴方の言うごく普通とはなんですか?】


 答えられますか? 「え、普通は普通でしょう?」と思った人、NGです。

 雑草という草は無いと言うように普通もないとこの講座では設定します。

 と言うかキャラ紹介を【ごく普通】の4文字で終わらせるな。


 じゃあごく普通という言葉は絶対使うなとは言いません。

 ちゃんと理由があれば使えば良いのです。と言っても「この主人公は一般的、平均的な高校生だから」という理由では使ってはいけません。


 ではごく普通の高校生とはどのようなときに使うかというと………

 例題の一つですが、本人だけがごく普通と思い込んでいて周りからすると普通という単語を辞書で調べ直したくなるほど逸脱した能力を持っている時です。


 もしくは【この作品世界の常識では主人公はごく普通だよ】という日本人読者の一般常識から逸脱した世界の日常を表現するときぐらいでしょうか。


 さて。今回の課題である自己紹介させるなですが、じゃあどうやって紹介しろというと第三者視点なら【彼の名は~】なんて方法でも良いですし、文字数稼ぎたいなら別のキャラを出しましょう。


 例題として学校の授業をサボっている主人公がいたとしましょう。

 冒頭は主人公が校舎の屋上で寝そべっていたとしましょう。

 屋上のドアが開いて一人の女生徒がやって来ました。

 主人公を見つけると「また授業サボってる!」

 そう言わせるだけで主人公はまたと言われるほど常習的に授業をサボっていることがわかります。


 ここで主人公が「ちっ、うっせーな、ほっといてくれよ」と言って女性徒が「貴方を連れてこないとクラス委員として私も怒られるの!」といえば

 主人公と女生徒は同じクラスの同級生であることがわかり、なおかつ女生徒はクラス委員をやっている真面目かもしれないことが情報として提示されましたね。


 もし、ここで主人公が「だって教室に戻ると何々がいるし……」といえば虐められているか苦手な同級生がいると読者に知らせる事ができます。


 貴方の作品でキャラ紹介するときの一考になりましたか?