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エンタメ的なものについて「文化とは何か?」というのをつらつら考えたときに出た自分なりの答えが、「非合理的なのに真似されてしまったもの」だ。
たとえば、こけし。
こけしって、おかしくないか?
あの細長い和製フィギュアである。相当にユニークな形で、アーティストの作品なら解るが、一般的に全ての人が愛好するタイプの造形には思えない。しかし、日本各地で製造され、日本文化として生き残っている。
たとえば、歌舞伎。
歌舞伎という表現にいたるまで様々な歴史があることは、wikipediaから得たつたない知識から知っている。演劇の一形態としては、だいぶ特殊じゃないだろうか。「守らなくてはいけない様式」というのが、他の舞台芸術にくらべてたくさんあるように思う。合理的に考えたら、もっとカイゼンできそうだ。でも、そうしないのが歌舞伎の良さだ。
たとえば、こんにゃく。
味もなければカロリーもない食べ物としては大変無意味な食品である。
これがまあ、簡単に作れるものだったら「アクセントとして有りだよね」とおもうのだがそうではない。制作が相当めんどくさい料理で、こんにゃく芋から何工程も手をかける必要がある。生活が大変だったはずの昔の人たちは、なんでこんなもの作ってたんだろう…。
などなど、いくらでも例をあげられそうだが「文化」とよばれるものは、どうにも非合理的だ。つまり、意味がわからないし役にもたたない。
「なぜそうなったのか」を突き詰めると、「そういう文化だから」「長く続いたから」としかいいようがない。
逆にいえば、合理的なものはあまり文化と呼ばれない。
こけしと比べてテディベアのほうが動物に似て可愛さがわかりやすいし、歌舞伎よりもサーカスや音楽ライブのほうが万人にうけるだろう。ファーストフードやチェーン店はこんにゃくより便利だ。そうした「わかりやすくて便利で経済的」なものは大型のショッピングモールのなかに組み込まれて、世界中に輸出されていく。
単に非合理的ならそれでいいかというと、単にユニークなものはアートと呼ばれる。その作品は、作者の孤高の表現として存在している。
文化がアートと決定的に違うのは「無駄なのに誰かが真似してしまった」のだ。こけしも、歌舞伎も、こんにゃくも、同じものをいろいろな人が作っている。そして長く続いてしまった。これが一番訳がわからないところだ。
なんで、こんな非合理的なものを、たくさんのひとが真似してるんだ?
たぶん、大好きだったからだ。・・・なんかそれ以外に合理的な理由がない。
そして誰かが広めようという意志をもっていたからだ。
誰かが「こけしが好き」で、そしてアートのように鑑賞するだけでは飽き足らず、「真似して作り、遺すべきだ」という強烈な意志があったに違いない。1つの産業カテゴリにするくらい誰かが努力したのだ。そうでなければ美術作品として1代で消えるだろう。いろんな人が作っちゃったから長く遺っているのだ。
こうして遺っている文化は非合理的ゆえにコピー耐性がある。
だって、効率悪いのだ。「愛ゆえに」存在し続けてしまったものたちである。最近カテゴリとして定着したものだと「つけめん」だ。食べ物というのは性質上二次創作が大変おきやすいジャンルなのだが、大勝軒が発明し、みんなが真似した。ブームが巻き起こったあともしっかりと定着し、進化し続けている。日本だけの麺文化だ。今この瞬間の大勝軒のレシピはコピーできても、つけ麺の味が追求され続ける現象はコピーできないだろう。
ネットにはgoogleをはじめとする「わかりやすくて便利で経済的だから人気がある」な世界と、ニコニコを始めとする「わかりにくくて不便で無駄だけどなぜか一部に愛される」世界がある。筆者が好きなのは後者のほうで、それがユニークだからだ。「ゲーム実況」はまだゲームという娯楽があって様式も合理的なので世界で同じ現象が起きるのは理解できるのだが、淫夢動画がアメリカでコピーされるのはあまりに想像できない。そういうものこそが、ニコニコ的だ。
会議室で大人と話しているとついつい「わかりやすくて便利で経済的だから人気がある」なものしか見えなくなってしまう。KPI(重要業績評価指標)で測れそうなやつだ。筆者も日々KPIKPIと唱えながら仕事をしている。経済活動にとって必要なことだ。
でも、KPIにできた瞬間競争に晒されることになる。だって他人が理解できて、改善可能で、比較可能なのだ。そりゃ、誰かに追いつかれる。コピー耐性が弱い。
なんか、エンタメとして今作らなきゃいけないものって「わかりにくくて不便で無駄だけどなぜか一部に愛される」、つまり文化と呼ばれるコピー耐性が強いものじゃないかとおもうのだ。
まあ、俺の場合「お前がそんなものをつくれると思い上がってるの?」と「不便で無駄なものってそもそも売れないし儲からなくね?」と脳内上司に質問されて詰むわけだが。
で、でもこんにゃくやこけしや淫夢動画ってあってもいいじゃないですか・・・ね・・・。
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