【動画】3万年前の草舟を試作=戸田拓撮影
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 約3万年前に人類が台湾から沖縄に渡った航海を再現実験するチームが16日、国立科学博物館(東京・上野)で、草舟の試作品づくりを公開した。沖縄・与那国島に自生している2種類の植物で作り、前日の15日から合計6時間ほどかけて完成させた。

 乾燥させた水生のヒメガマの茎を束にし、ツル性のトウツルモドキで巻いて縛った。縛るときに束を踏んだり石でたたいたりして圧縮し、堅く巻きつける。三つの束を横に並べて、さらにトウツルモドキで縛ると、平たい舟になった。チームの草舟製作を担当する探検家の石川仁さん(48)は「ヒメガマは中に空気が入る層状になっていて、乾燥させると浮く。水の上に乗せてぬれると1、2割膨張するので、底から水が入りにくい」と話した。

 今年7月に予定している航海実験は、与那国島から西表島への75キロ。実際に使う草舟は全長7~8メートルの予定だが、今回は半分以下の大きさで試作した。

 沖縄の石器時代の遺跡から舟は発見されておらず、3万年前の舟がどのようなものだったかは、わからない。チームの代表、国立科学博物館の海部陽介さん(47)は「縄文時代の丸木舟のような舟はオノがなければ作れないが、遺跡からオノは見つかっていない。竹はへさきを上に曲げるのが難しい」といい、草舟だった可能性が高いとみる。ヒメガマは割れた貝などで簡単に切ることができ、トウツルモドキは手で引っ張って収穫できるという。

 チームは、人類学者や考古学者、海洋探検家など26人から成る。国立科学博物館の篠田謙一さん(60)は、「沖縄・石垣島で発見された1万9千年前の人骨は、DNA鑑定で南方のDNAと同様と分かっている。当時も南方から沖縄の間には海があり、実際に渡って来られたのか、学問的に意味がある航海実験」と話した。

 今年の航海実験に続き、来年は台湾~与那国島にも挑戦する予定。費用5千万円のうち2千万円を4月12日まで、インターネットを通じたクラウドファンディングで出資を募っている。(神田明美)