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円陣で現金 「験担ぎ」では通らない

 4選手が野球賭博に関わっていたことが明らかになった巨人で自チームの公式戦の勝敗に絡み、選手間で試合ごとに最大14万円程度の現金のやり取りが数年間にわたって行われていた。長年のライバル、阪神などでも同様の金銭授受が常態化していたことが判明した。

     巨人は「(現金は)ご祝儀で、験担ぎの意味があった」と釈明したが、「験担ぎ」で通用するわけがない。日本野球機構(NPB)には徹底した調査を求めたい。

     巨人では複数の選手たちが賭けトランプや賭けマージャンなどに興じていたことが分かっている。こうしたことを誰もとがめないチームの体質が自分たちの出場する試合を現金授受の対象にした一因だろう。

     巨人によると1軍の試合前に投手と野手に分かれて組む円陣で掛け声を担当した声出し役の選手が、その試合に勝てば他の選手から1人5000円を受け取り、負ければ各選手に1000円ずつを支払っていた。

     1軍登録選手は投手が12人程度、野手が16人程度で、そのほとんどが参加していた。勝てば投手は6万円程度、野手は8万円程度が声出し役に渡る仕組みだった。高橋由伸監督が現役だった2012年5月ごろから始まった。そのシーズンにリーグ優勝を果たしたことで昨季まで約4年間続いたが、野球賭博問題が発覚したのを契機に「誤解を招く恐れがある」として球団が禁止した。

     円陣は球場に足を運んだ数万人のファンの目の前で組まれる。衆人環視の場がグラウンド外での現金授受につながっていたわけで、ファンならずとも驚きと落胆は大きい。

     当時の原辰徳監督ら首脳陣は知らなかったのか。気付いていなかったとしたら監督責任は重い。

     球界の認識の甘さにもあきれる。

     NPBは昨年秋の時点で事実を把握しながら公表しなかった。金額が少なく、チームの勝ち負けのどちらの立場を取るか選手に選択権がないことから、野球協約が禁じる「敗退行為(八百長)」には当たらず、野球賭博でもないと判断したという。

     賭博に当たらないとしても、プロ野球選手に求められるモラルに反する行為であり、見過ごすことはできないはずだ。

     巨人の説明も説得力を欠く。「チームの一体感と士気を高めるためで、賭け行為ではない」としているが、金銭がかかっていないとモチベーションを保てない選手はプロと呼べるのか。

     NPBは昨年秋、巨人に制裁金1000万円を科した。開幕を控えたこの時期に野球への不信感を再び広げたことを重く受け止め、他球団も含めて徹底した調査を行うと同時に新たな処分を検討すべきだ。

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