メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

シリア和平 停戦守って対話続けよ

 危うい停戦状態が続くシリアに関する和平協議がジュネーブで再開された。これと時を同じくしてプーチン・ロシア大統領はシリアにいる露軍主要部隊の撤収と空爆停止を表明した。大きな曲がり角である。武力対決から話し合い解決への流れが定着するよう望みたい。

     アサド政権と反体制派による和平協議は約1カ月半ぶりだ。双方の主張の隔たりは大きく、協議の難航は必至だが、2011年に始まった内戦は15日で5年を迎え、死者は27万人に達した。国内外の避難民は1000万人を超え、欧州諸国は大量の難民流入に苦しんでいる。

     史上まれに見る人道危機を一日も早く終わらせたい。意見の相違はあろうと停戦を順守し、これ以上の流血と市民の苦難を避ける。この点は各派とも絶対に守るべきだ。仲介役の国連のデミストゥーラ特使は「協議が失敗すれば、さらにひどい戦いになる」と語る。私たちも同感だ。

     協議の焦点はアサド大統領の処遇だろう。同大統領の退陣を求める反体制派に対し、政権側は大統領の処遇を話し合う協議ではないと主張する。関係国の中では米国とトルコ、サウジアラビアなどがアサド大統領の退陣を求め、ロシアとイランなどは政権存続に前向きだ。

     露軍撤収は、アサド政権存続を図るロシアの自信の表れとも映る。1979年にアフガニスタンに侵攻したソ連軍は10年後、親ソ政権を見限って退却したが、今回の撤収は意味合いが違う。ロシアが軍事介入した昨年9月から、アサド政権は着々と軍事的優位を固めてきた。

     和平協議では、デミストゥーラ特使が双方の代表団と個別に会談し、新たな統治機構の設置や憲法改定、18カ月以内の大統領・議会選挙の実施について意見を聞く見通しだ。合意の達成は容易ではないが、特使の粘り強い仲介に期待したい。

     米露の協力も欠かせない。シリアと歴史的に関係が深いロシアと、シリアを「テロ支援国」に指定する米国は立場も思惑も異なる。だが、内戦が続けば、シリアはいわゆる「破綻国家」となって過激派組織「イスラム国」(IS)が勢力を拡大し、政情不安や国際テロの暗雲は中東諸国からロシア、米国にも及ぶだろう。

     内戦は米露の長期的な利益に反する。米露はむしろ各派の足並みをそろえることに努め、ISとの戦いに集中すべきである。

     「ポスト・アサド政権」の青写真を描くことも必要だ。リビアやイエメンのように、独裁が終わった後に政治的混沌(こんとん)や内戦に陥った例もある。新体制作りの主役はシリア国民とはいえ、新たな体制への軟着陸には米露の支えがカギになる。

    あわせて読みたい

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです