中国は安定成長に不可欠な構造改革を推進する方針を示したが、失業者増などの痛みをどう克服するかが大きな課題だ。民生よりも共産党の権威を重視するような内政や外交の姿勢も気がかりだ。
全国人民代表大会(全人代=国会)で李克強首相は二〇一六年の国内総生産の成長目標を6・5〜7%と幅のある数値で発表し、一五年の7%前後から引き下げた。
中国経済にとって、輸出や大規模な公共事業に頼る急成長はもはや困難で、減速の痛みに耐えながら、安定成長へカジを切ることが急務となっている。
特に、国有企業による鉄鋼や石炭の過剰生産は世界経済にも負の影響を与えている。李首相は経営が破綻しながら政府や銀行の支援で存続する「ゾンビ企業」の合併、再編などに果敢に取り組む構造改革を進めると訴えた。
改革によって生じる大量の失業者対策に目を配りつつ、付加価値の高い新産業を育成できるかどうかが、重要な課題となろう。
高度成長に伴う行き過ぎた拝金主義の下で、極端な貧富格差も生まれた。低所得層の所得引き上げは重要だが、腐敗撲滅による公正な社会の実現こそ求められる。
李首相は、地方指導者らが習近平主席を「党中央の核心」と持ち上げ始めたことを念頭に「核心意識」や党中央との「一致意識」を強めるべきだと訴えた。習氏や党の権威を高めようとする姿勢が目立つのは気がかりだ。
その習主席は「党・政府が管轄するメディアは宣伝の陣地であり党を代弁せねばならない」と指示し、報道統制を強める。党や政府への健全な批判すらためらわれる空気が社会にまん延しているようだ。肝心なのは、畏怖されるよりも信頼される政治の下での、民生の安定や向上ではなかろうか。
全人代では「大国外交の理念の実践」も強調されたが、大国意識の高まりは周辺諸国との摩擦も起こしている。南シナ海での地対空ミサイル配備など力による実効支配の拡大や、人権問題の批判に反発する姿勢は、国際社会の理解を得られないだろう。
全人代では「二〇年までに小康社会(ややゆとりある社会)を全面的に完成させる」との目標を盛り込んだ第十三次五カ年計画が示された。所得を倍増させることだけが「小康社会」の目標ではあるまい。民が強権政治の息苦しさを感じることなく、国際社会と協調して発展していけるような社会を築き上げてほしい。
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