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【社説】

組み体操問題 学校の自主性が大切だ

 学校での組み体操の事故が相次ぎ、規制が強まっている。横並び意識から上意下達式に動いているかのようだ。地域や専門家の声によく耳を傾け、対策を立てるのは本来、学校の役目ではないか。

 四つんばいになって段を重ねるピラミッドや、肩を組んで立って段を重ねるタワーはつとに知られる。組み体操は、運動会や体育祭の“花形”ともされてきた。

 しかし、近年、まるで高さ比べのように高層化が進み、子どもが転落したり、押しつぶされたりする事故が後を絶たず、社会問題化している。

 全国の小中高校での組み体操の事故は、二〇一一年度から四年連続で八千件を超えている。頭や首、腰などの重要部位のけがも多く、障害が残った事例もある。

 事故の多発を省みて、千葉県の流山や野田、柏、白子などの市町は廃止を、大阪市や東京都北区はピラミッドとタワーの禁止を決めたという。子どもの安全確保には無論、万全を期さねばならない。

 けれども、挑戦の舞台が一つ失われることにもなる。地元の教育委員会などは結論を出す前に、どんな手続きを踏んだのだろうか。

 事故原因をつぶさに調べ、再発防止の手だてを探ったのか。安全性の高い技もあるという専門家の声もある。協調性や連帯感が育まれるという教育効果を挙げる声もある。何より子どもや保護者、地域の思いを聞いたのだろうか。

 学びの場の課題である。参加者全員の知恵を集め、一緒に対策を練り上げることが望ましいのではないか。仮に上の決定をそのまま下に指示するようなやり方をすれば、学校が思考停止に陥る危うさもあると考えるが、どうだろう。

 現場で主体的に教訓を学び、再び繰り返さないよう創意工夫を重ねることが大切だ。何事によらず学校の当事者能力を高める努力こそが、子どもを守り、育てる力を強めるのではないだろうか。

 スポーツや体育には大なり、小なり危険が潜む。跳び箱であれバスケットボールであれ、事故は起きる。個々の子どもの体力や運動能力の差を問わず、一律に参加を求める学校教育の制度上の限界も背景にはうかがえる。

 ならば、せめて運動会では、例えば、技の難易度に応じて参加希望を募るといった仕組みを採用できないだろうか。先生の研修や子どもの練習の在り方にも検討の余地はあるのではないだろうか。

 安全と挑戦を両立できないものか。地域ぐるみで考えたい。

 

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