年金制度の見直し法案が国会に提出された。5年ごとに行われる年金財政見通しや将来受け取れる年金水準の検証結果を受けての見直しである。

 だが、検証結果が公表されたのは2014年だ。すでに2年近く経っており、対応が遅すぎる。サミット(主要国首脳会議)の開催や夏の参院選を控え、国会日程は限られているが、速やかに審議に入り議論を深めることが政治の責任だ。

 法案の焦点は、年金の給付を抑える仕組みの強化だ。

 今の制度には、保険料を納める働き手の減少や平均寿命の伸びに応じて給付を抑える仕組みがある。しかし、ほとんど機能してこなかった。

 理由はデフレだ。この仕組みでは、例えば物価が2%上がった時、本来は年金額も同じように増やすべきところを1%しか増やさない、という形で給付を抑える。だから、物価が上がらないデフレだと実施できない。

 そこで、抑制できなかった分を翌年度以降に繰り越し、物価上昇時に適用する、というのが見直し案の内容だ。まとめて実施する分、その年の年金の目減りは大きくなる。

 だが、これを実施しなければ、その分は将来年金を受け取る世代の給付が減る。今の制度では、保険料の上限が決まっており、年金財政に今後、入ってくるお金はほぼ決まっている。お金が足りなくなる分は給付を抑えて調整するしかない。

 見直し案が示す方法でもデフレが続けば繰り越し分がたまり続け、年金財政が悪化する心配は残る。だからといって、経済環境を考慮せずに給付抑制を進めれば、高齢者の負担感は大きくなる。どこで折り合いをつけるのか。難しい問題だが、議論を先送りすれば、将来世代につけが回るだけだ。

 検証結果では、給付抑制によって国民年金の給付水準が厚生年金よりも大きく下がる見通しも示されている。

 国民年金に入っているパートやアルバイトが厚生年金に移れば、給付水準の低下が緩和されるとの試算もある。今回の法案にも労使合意で厚生年金の適用対象を広げる案が盛り込まれてはいるが、もっと大胆に適用拡大を考えてはどうか。

 一方で、低所得の高齢者への対応を年金制度だけで考えることには限界も見えている。福祉としての施策を含めて考えるべきだろう。介護や医療の負担も加味した、きめ細かな対応が必要になる。

 少子高齢社会に向けた議論は、待ったなしである。