「民進党」は野党勢力を結集して安倍晋三首相率いる巨大与党の対抗軸となれるのか。党名を変えても、実現を目指す政策や理念が主権者たる国民を引きつけなければ、政権の暴走は止められまい。
民主党と維新の党がきのう、合流して二十七日に結成する新党の名称を「民進党」に決めた。
党名に「民主」を残したい民主党が「立憲民主党」を、維新の党が「民進党」をそれぞれ主張して調整が続いていたが、両党が十二、十三両日に行った世論調査で、民主党支持者を含めて「民進党」を推す声が多かったという。
共同通信社による二月の世論調査では民主、維新両党の合流に関し「一つの党になる必要はない」との答えは65・9%に上る。新党への期待は高くないのが実態だ。
一九九六年の旧民主党の結党以来、国民に定着した「民主」の名を新党への移行で変更する必然性はあまり感じないが、政権を託すに足る政党を再び目指す気概の表れなら、あえて異は唱えまい。
民進党には「国民とともに進む」(江田憲司維新の党前代表)との意味が込められているという。現政権がしばしば無視しようとする国民の声を大切にしようとする政治姿勢を忘れてはならない。
名は体を表す。党名は重要ではある。ただ、それにも増して政党にとって重要なのは、どんな社会を目指すのかという理念と、それを実現するための政策だ。
新党は綱領で「自由、共生、未来への責任」を結党理念とし、借金依存体質を変える行財政改革や二〇三〇年代の原発稼働ゼロ、持続可能な社会保障制度確立、行きすぎた格差の是正を目指し、外交・安全保障では専守防衛を前提に現実主義を貫く、としている。
その方向性は全体としては望ましいとしても、どうやって実現するかが厳しく問われる。例えば、行財政改革と社会保障の維持をどう両立するのか、格差をどう是正するのか、などである。
四月に衆院補選、今年夏には参院選があり、首相が「衆参同日選挙」に踏み切る可能性も取り沙汰されている。政策の具体化を急ぎ、安倍政治とは違う選択肢を有権者に示すことが民進党最初の役目となる。
首相は自らの政策の正当性を主張し続け、在任中の憲法改正にも意欲を示す。一連の国政選挙は安倍政治や憲法改正の動きに歯止めをかけられるか否かの分岐点だ。新党結成を機に、野党勢力の幅広い結集も目指さねばなるまい。
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