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【社説】

「反難民」党躍進 踏ん張れメルケルさん

 ドイツの州議会選挙で難民受け入れ反対を訴える右派政党が躍進し、メルケル首相率いる保守与党が議席を減らした。首相への逆風は厳しさを増すが、人道重視の寛容政策を貫くよう求めたい。

 躍進したのは右派政党「ドイツのための選択肢」。旧東独の一州で得票率約24%を獲得して第二党、旧西独二州では約13%、約15%で第三党となった。これまで、いずれの州でも議席がなかった。

 メルケル首相は選挙後、難民政策の不変は言明したものの、「満足できるような解決策を見つけるに至らないことへの有権者の不安」が背景にあったと認め、欧州全体での解決を図っていくとした。

 内戦が続くシリアなどからの難民殺到にメルケル首相は昨年秋、上限のない受け入れを表明。入国者は約百十万人に上り、難民による暴行事件が起きたことで、寛容政策への批判は強まった。

 「選択肢」党は反ユーロを主張し三年前に設立され、反難民で支持を広げた。女性党首のペトリ氏は「銃を使ってでも違法な入国を阻止しなければならない」と強硬姿勢を際立たせていた。

 独誌シュピーゲル(電子版)は意外にも、今選挙戦はメルケル氏の勝利だった、と指摘する。寛容政策への異論が噴出する保守与党から「選択肢」党へ票が流れた可能性がある半面、連立相手の社会民主党に加え、野党緑の党の支持者が寛容政策を支持した、と分析する。南西部の州では、保守与党大敗の一方で緑の党が躍進。西部の州では、寛容政策に距離を置きメルケル氏のライバル視されていた保守与党の女性州首相候補が、社民党に敗れた。

 戦後一貫してきた難民への寛容政策は逆風にもかかわらず、国民に定着していると考えてよさそうだ。ただ、難民への不安や反感をなくすには、ドイツ語習得や職業訓練による社会統合が急務だ。

 ドイツにばかり難民を押し付けるのには無理がある。欧州連合(EU)はトルコと、欧州に到着する難民を送還しトルコから直接シリア難民を受け入れることで合意した。受け入れに難色を示す中東欧諸国には、難民流入をコントロールしEU加盟国で負担を分担していくよう、今週の首脳会議で理解を訴えたい。

 英国では六月、EU離脱の是非を問う国民投票が実施される。責任と規律と協調の必要性を、政治家は分かりやすく説明せねばならないだろう。

 

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