瀬戸内海で密漁の瞬間を捉えた映像です。
足ひれを使って潜る様子。
船の上から空気を送るホースも確認できます。
通常、使用が禁止されている「潜水器」を使った密漁。
夜行性のアワビなどが岩陰から出ている所をライトで照らして根こそぎ捕獲するのです。
愛媛県では県が中心となって取り締まりを行っています。
向かったのは松山市内の漁港。
密漁者の多くは、漁協に所属する漁業者だと県は見ています。
愛媛県 水産課職員
「大体(密漁に)行っている者は分かっている。」
しかし、密漁は現行犯で押さえない限り罪に問うことは難しいといいます。
これは、密漁の疑いのある船を捉えた映像です。
追跡中、陸に乗り上げました。
一部の船員は逃走。
残った船員が海産物を海に投げ捨てています。
県は決定的な瞬間を捉えたと考えました。
しかし密漁をしている現場が映っていないため、この映像だけで罪に問うことはできませんでした。
愛媛の密漁者による被害が今、最も深刻なのが、対岸にある山口県です。
乱獲を防ごうとルールを守って素もぐりを続ける漁師は、我慢の限界を迎えています。
素もぐり漁師
「もうアワビは圧倒的に少ない。
小さいのも全部持って帰られると、次に産卵するものがいなくなったら本当に何もいなくなる。
そうなればもうこの仕事はやめようかな。」
山口県の推計では、被害は少なくとも年間2億5,000万円に上っています。
いかに密漁を減らせるのか。
愛媛県と山口県は連携して取締りを強化しています。
まず愛媛県の職員が、不審な船の動きを監視、取締り船が追跡します。
そして山口県の海域に入ると、不審船の動きを連絡。
山口県の取締り船が急行し、密漁の現場を押さえようという作戦です。
取締りの現場に密着すると、密漁者の巧妙化する手口が次々と見えてきました。
先月(5月)中旬。
山口県の取締り船に同乗して、6日たった夕方。
「18時45分、4隻出港。」
不審な船が4隻出港したと、愛媛県側から連絡がありました。
今回侵入してきた船を過去に捉えた映像です。
強力なエンジンを積み、時速90キロ以上で山口県に侵入してくるといいいます。
「これか、これが怪しい。」
不審な船を探しますが、相手も最新のレーダーを駆使して取締りの動きを把握、簡単に近づくことができません。
探し始めて2時間。
「島から出たね。」
「照明、照明、照明。」
「上、上、上!」
うっすらと見える白い船体。
密漁船とみられる船を発見しました。
「右、右、右!」
船の名前や乗組員を特定するため、スピードを上げて近づきます。
ところが、相手が思わぬ行動に出ました。
強力なライトを当て返してきたのです。
証拠を押さえるための撮影を妨害する手段だといいます。
さらに、逃げることなく一定の距離を保ったまま光を当ててきます。
不審な船は常に連絡を取り合っているといいます。
1隻が見つかってもその船がおとりになり、残りの船が密漁を続けるのです。
話:取締り船 船長
「こっち(取締り船)の動きを分かれて見ている。
結果的に(密漁者同士の)連携がとれている。
『1対複数』ですからね。」
30分にわたり追跡を続けましたが、密漁の現場をおさえることはできませんでした。
巧妙化する手口にいかに対応していくのか、罰則の強化を含め、取締りのあり方を抜本的に見直す必要がありそうです。