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「残業禁止」と「定年廃止」が日本経済を救う
ライフネット生命保険会長兼CEO 出口治明

2016/3/10付
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 皆さんが自由に自分が生きる社会を選べるとしたら、次の2つのうちどちらを選ぶでしょうか。

 ひとつは年間で2000時間の労働、長期休暇は1週間前後で経済成長率は0.5~1.0%の社会。もうひとつは年間1300~1400時間の労働、1カ月間のバカンスがあり、成長率は1.0~1.5%の社会。おそらく多くの人が後者の社会を希望するのではないでしょうか。

1948年三重県生まれ。京都大学を卒業後、72年に日本生命保険入社。08年ライフネット生命保険開業。13年6月より現職。

1948年三重県生まれ。京都大学を卒業後、72年に日本生命保険入社。08年ライフネット生命保険開業。13年6月より現職。

 お気づきかもしれませんが、この2つの社会は前者が日本、後者が欧州です。20世紀後半の日本は米国に追いつき追い越せというキャッチアップモデルの下、労働者は休暇をさほど取得せずに2000時間を超えて働き、年平均7%という経済成長を達成しました。

 しかし、現在の日本は少子高齢化で人口が減少して低成長が定着したままです。冷戦の終結というパラダイムシフトも生じました。このように日本を取り巻く外的環境が激変した中で、高度成長期と同じ働き方を続けていたら、結果は明らかです。加えてわが国は2030年までに約800万人という膨大な労働力不足に見舞われると推計されています。

 前提条件が変わればそれに合わせて対応していかなければなりません。わが国の最大の課題が労働改革であることは言を待ちません。

 どこから手をつけるべきでしょうか。1つ目は無意味な残業の禁止と筆者は考えています。

 わが国の労働生産性は先進国の中では最低グループに属します。オフィスで遅くまで働いていると、上司が「仕事熱心で頑張ってるな。ご苦労さま」などと褒める傾向があります。そうした企業では、誰もが「付き合い残業」を続けることになります。誰しも褒められたい気持ちに変わりはないからです。

 残業は原則禁止とし、上司の具体的な職務命令がある場合のみ残業ができるようにすべきです。そうなれば、自己投資する時間が生まれ、家事や育児・介護を家族みんなで分担できるようになります。わが国に根強く残る、残業を評価するという誤った精神論を撤廃するだけでも、労働生産性は向上するのではないでしょうか。

 2つ目は定年制の廃止です。わが国は世界一の超高齢社会です。政府も「介護離職ゼロ」を目標に掲げるように、介護が大きな社会問題になっています。介護が必要な期間を定義すれば「平均寿命マイナス健康寿命」となります。つまり、健康寿命を延ばすことが政策課題です。

 健康寿命を延ばすにはどうすればいいか。医師に尋ねると、異口同音に「働くこと」という答えが返ってきます。それなら定年制を即刻廃止すべきです。他の先進国と同様に定年制(年齢による差別)がなくなれば、年功序列的な賃金制度がなくなり、グローバルスタンダードである同一労働同一賃金制になります。これは政府が目指している方向でもあります。

 最後にセーフティーネットの拡充です。それは厚生年金の適用拡大ではないでしょうか。

 国民年金は自営業者のための制度であり、厚生年金は被雇用者のためのものでした。ところが、今では原則、週に30時間働かないと厚生年金に加入できない仕組みになっています。

 当初の原則に戻り、パートやアルバイトを含むすべての被雇用者を厚生年金の適用対象に組み込むべきです。同時に健康保険の適用対象の拡大も行えば、労働時間に縛られることなく誰もが安心して働けるようになります。多様な働き方も実現するでしょう。

 企業が人を雇うということは、その人の老後を含めた人生に責任を持つということです。ドイツと同様に一刻も早く、適用拡大に取り組むことが望まれます。

[日経産業新聞2016年3月10日付]

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